ベルギー人シェフに聞く、自然や食材を尊重する文化を表す日本食の魅力

(ベルギー、日本)

ブリュッセル発

2023年12月15日

「世界最高の野菜レストラン」を毎年発表している食団体「We're Smart World」(本部ブリュッセル)が、女性シェフ支援を目的として2023年に新設した「世界最優秀女性ベジタブルシェフ賞」に日本人女性シェフを選出した。受賞したのは、新潟県南魚沼市にある宿泊施設「里山十帖」のレストラン「早苗饗(さなぶり)」の桑木野恵子シェフで、10月24日にブリュッセルで授賞式が開かれた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。主催団体の設立者でベルギー人シェフのフランク・フォル氏に、活動目的や日本の食文化や日本人シェフの印象などを聞いた(2023年12月1日)。

「We’re Smart World」は、青果類の消費促進と栄養バランスの取れた食生活を推奨することを目的に1989年に設立。消費者や政策立案者、食品企業などへの啓発や助言、世界各地のレストランを評価付けしたオンライン・ガイドブックの発行、今回表彰のあった「We’re Smart Awards」の開催を通じたレストランやシェフの紹介に取り組んでいる。ベジタリアン(菜食主義)の推進ではないが、肉や魚介類よりも野菜を優先して取り入れるというスタイルだという。

フォル氏自身は、ベルギー国内外のレストランで修行後、1989年にベルギー・ルーバンのミシュラン星付きレストラン「サイア・ピノック」のオーナーシェフに就任。「青果類は様々な調理法が可能で、創造力をかき立てられる」と、野菜や果物を料理の主役にとらえはじめた。その後、健康や持続可能性に対する関心も深め、「We’re Smart World」を設立し、青果類を豊富に使ったバランスの良い食事を推奨するコンサルタントとしての活動を開始した。2005年に「サイア・ピノック」を売却し、現在はコンサルタント活動に専念している。

オンライン・ガイドブック「We're Smart Green Guide外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」には現在、日本のレストランが49店掲載されている。フォル氏は日本を定期的に訪れており、「特に地方で素材をうまく生かすシェフに出会う」と評価する。

フォル氏は「日本には自然や相手を尊重する文化がある」として、料理にもそうした精神が表れていると話す。欧州人シェフの中には技巧に走る人も少なくない中、日本人シェフの食材そのものの味を生かす調理や、食材の旬と生産者を尊重する姿勢に感銘を受けたという。欧州の中では、北欧諸国のシェフが日本人シェフに共通する姿勢を持つと分析。薬膳に着想を得て食材や調理法を選択するのを、「論理的」で「欧州にはない発想」と関心を持つ。早苗饗を訪問した際、初代の世界最優秀女性ベジタブルシェフ賞を受賞した桑木野シェフから、食材の特徴や効能について解説を受けて強く印象に残ったという。食べる人の健康にも思いを寄せる点に、日本の「尊重する文化」の良さを感じているようだった。

写真 世界最優秀女性ベジタブルシェフ賞を受賞した桑木野恵子シェフ(ジェトロ撮影)

世界最優秀女性ベジタブルシェフ賞を受賞した桑木野恵子シェフ(ジェトロ撮影)

写真 さなぶり訪れたフォル氏(左)と桑木野シェフ(We’re Smart World提供)

早苗饗(さなぶり)を訪れたフォル氏(左)と桑木野シェフ(We’re Smart World提供)

(鈴木由美子、滝澤祥子)

(ベルギー、日本)

ビジネス短信 7c0029c5b5c63ed4