タクシーとE-ヘイリングサービスの競合激化

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年12月12日

マレーシアのタクシー業界は近年、E-ヘイリングとの競争に直面している。タクシー許可証の発行数は過去4年間で顕著に減少し、一方で、配車サービス(E-ヘイリング)の許可証は増加していることが同国陸上公共交通庁(APAD)の統計で明らかになった。11月25日付の現地紙「ハリアン・メトロ」によると、APADは同紙に対し、2023年のE-ヘイリングへの認可証発行数が2020年比で23.1%増の14万8,061件だった一方、伝統的タクシーへの発行数は3万4,177件と22.3%減少したということを明らかにした。APADの報道担当者は「国内旅客の陸上移動に関する嗜好(しこう)の変化を示している」と述べた。

E-ヘイリングサービスの普及が進む一方で、タクシーへの需要も依然として存在している。マレーシアタクシー協会(GTSM、レンタカー、リムジン、空港タクシーを含む)のカマルディン・モハマド・フセイン会長は、タクシー需要が一時的な要因で高まるケースがあると指摘する。「ピーク時、祝日、悪天候時はE-ヘイリング料金が値上がりするため、乗客はタクシーを選ぶ傾向にある」と説明した。また、ペナン消費者協会のモヒディン・アブドゥル・カデル会長は、タクシー需要増の背景には政府がE-ヘイリングサービスに対する料金規制を導入していないこともあると分析している。

一方で、カマルディン氏は、全般的にはタクシー業界は乗客確保の困難さや技術投資の不足により、市場で苦労しているとも述べた。この点、マレーシアの陸上交通の業界団体の陸上交通組織(PPDM)は、乗客とよりつながりやすくし、運賃を公正に管理するため、E-ヘイリングやタクシーも含めた公的な配車プラットフォームを政府が開発すべきだと提言している(2022年2月2日「マレーシアキニ」)。カマルディン氏によると、例えば、国内配車大手グラブはアプリ内でタクシー運転手向けのマッチングシステムも提供しているが、同社が得るコミッション率で個人ドライバーの方がタクシーよりも高く設定されているため、システム上、個人ドライバーが優先して配備される仕組みがある。このため、タクシー運転手としては、個人ドライバーが引き受けたがらない近距離低運賃の乗客しか引き受けざるを得ず、全般的に乗客へのアクセス機会が限定される構造があるという。

11月23日にはカマルディン氏率いるGTSMがアンワル・イブラヒム首相と会談し、公的プラットフォームの開発を直接提言した。これを受けてアンワル首相は自身のSNSで「国内の約4万人のタクシー運転手の福祉を確保し、タクシー業界のエコシステムの向上を目指すべく、提案を積極的に検討する」として、支援の意向を示している。

(ニサ・モハマド)

(マレーシア)

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