米国含む22カ国、COP28で2050年までに原子力エネルギー容量を3倍に引き上げる宣言発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月06日

米国を含む22カ国(注)は12月2日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、2050年までに原子力のエネルギー容量を3倍にまで増加させるべく、多国間宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

米エネルギー省が発表した宣言は、(1)21世紀半ばまでに世界全体で温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロを達成し、産業革命前と比較して気温上昇を1.5度に抑えつつ、持続可能な開発目標の目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)を達成する上で、原子力が重要な役割を担う、(2)原子力はクリーンなベースロード電源で、既に電源として第2位を占め、エネルギー安全保障上の利点がある、(3)OECD原子力機関、世界原子力協会や気候変動に関する政府間パネルの分析で、世界のネットゼロ排出達成には世界の原子力発電容量を2050年までに3倍にする必要があるとしている、(4)新しい原子力発電は専有面積が小さく、必要な場所に設置でき、再生可能エネルギーとうまく連携し、排出削減が困難な産業部門を含めて脱炭素化するための柔軟性を備えているといった認識の下で採択された。

同宣言では、原子力発電所を安全性、持続可能性、セキュリティー、不拡散性の最高基準などに沿って運転することや、核燃料廃棄物を長期にわたって管理することなどについて、各国が責任をもって国内措置を講じることなど、拡大に向けたさまざまな措置を講じることとしている。具体的には、(1)革新的な資金調達メカニズムを含めた原子力発電への投資を進めること、(2)世界銀行、国際金融機関、地域開発銀行の出資者に対して、その組織のエネルギー融資政策に原子力を含めることを奨励し、原子力を積極的に支援するよう呼びかけること、(3)小型モジュール原子炉やその他の先進的な原子炉などの開発と建設、ならびに水素や合成燃料の製造など脱炭素化のための広範な産業用途の開発と建設を支援することなどを盛り込んでいる。これらの取り組みの進捗については、COPの枠内で毎年レビューしていく方針だ。

この目標を達成するためのネックは、やはり資金源のもようだ。「ニューヨーク・タイムズ」紙(12月2日)は、アイダホ州の小型原子力発電プロジェクトが金利と物価上昇の影響を受けて、プロジェクトコストが2倍弱に膨れ上がって中止に追い込まれた例を挙げながら、先進国で建設費の高騰に伴う投資の停滞や、プロジェクトの予算超過と遅延が発生していると指摘している。これに対処するべく、同宣言に参加したフランスのエマニュエル・マクロン大統領やスウェーデンのウルフ・クリステション首相らは世界銀行や国際金融機関に対して原子力プロジェクトへの資金提供を支援するよう呼びかけている。

(注)米国、ブルガリア、カナダ、チェコ、フィンランド、フランス、ガーナ、ハンガリー、日本、韓国、モルドバ、モンゴル、モロッコ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、ウクライナ、アラブ首長国連邦(UAE)、英国

(加藤翔一)

(米国)

ビジネス短信 6aa5d83f4b014e57