2030年までの上位中所得国入りに向けたカンファレンス、閣僚や有識者が討議

(カンボジア)

プノンペン発

2023年12月13日

「第15回カンボジア・アウトルック・カンファレンス」が11月23日にプノンペンで開催された。8月に就任したフン・マネット首相をはじめ、政府首脳(副首相、経済閣僚)、行政、財界、外国政府・国際機関などが参加し、カンボジア政府が掲げる「2030年までに上位中所得国入り」を果たす目標(カンボジア・ビジョン2030)に向けて、強靭(きょうじん)性や持続可能性、包摂性のある経済成長を実現するための経済・社会政策を議論した。

同カンファレンスは、カンボジア唯一の政府系シンクタンクのカンボジア開発資源研究所(CDRI)が毎年開催しており、新政権下では初めての開催となった。基調講演でフン・マネット首相は、企業が抱える約200の課題への具体的な対応策を示すなど、経済・社会の持続的、包括的な成長を目指すと話した。

カンファレンスは3つのパネルディスカッション(注1)で構成され、討議内容は政策提言書に反映の上、新政権の政策運営に生かしていく。第1セッション「カンボジアの経済予測と優先改革」では、オーストラリアのローウィー国際政策研究所・インド太平洋開発センターの主任エコノミストのローランド・ラジャ氏が、世界経済の低迷などによる縫製品輸出の落ち込みや、中国経済の低迷に起因する同国からの投資や観光の減速がカンボジア経済に影を落としていると説明した。その上で、2030年までに上位中所得国入りを目指すには「年7%に近いGDPの成長路線への回復が望まれる」と述べた。

日本からも提言、共創を示唆

日本からはジェトロの河田美緒理事がパネリストとして、第3セッション「カンボジアが一段上の発展路線を描くには」に登壇した。河田理事は、カンボジアは平均年齢が若いなど、日本にはない魅力を有する点に触れ、「カンボジアと日本は親和性の高い補完関係にあるパートナーで、社会課題解決型ビジネスなど新分野に共創余地がある」と述べた。また今後、タイなど周辺国の日系製造業から見たプラスワン戦略の受け皿(注2)としての役割に加え、デジタルイノベーション分野で協業による社会課題の解決、物流業で日系企業の進出によるコネクティビティーの改善がカンボジアの発展にも貢献できると話した。

CDRI理事長のメイ・カリアン氏によると、日本人が同シンポジウムを通じてカンボジア政府への提言を行ったのは今回が初めて。カリアン氏は、日本とカンボジアの外交樹立70周年と日ASEAN友好協力50周年の節目の年での日本からの参加を歓迎した。

写真 第3セッションの様子(ジェトロ撮影)

第3セッションの様子(ジェトロ撮影)

(注1)登壇者などの情報はCDRIホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

  • 第1セッションテーマ:「カンボジアの経済予測と優先改革」
  • 第2セッションテーマ:「持続可能な開発と社会進歩のための優先事項」
  • 第3セッションテーマ:「カンボジアが一段上の発展路線を描くには」

(注2)プラスワンとは、主に日本国外で事業を展開する製造業が進出先国内から、第三国で事業を展開・拡張することを指す。「タイプラスワン」「チャイナプラスワン」「ベトナムプラスワン」など。

(トー・タイ)

(カンボジア)

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