日系企業が米ハワイ州マウイ島の被災地にカセットコンロ1,000台を無償提供
(米国、日本)
ロサンゼルス発
2023年12月04日
米国ハワイ州マウイ島で11月22日、岩谷産業のカセットコンロを現地NPOのマカナ・オ・ケ・アクア(Makana O Ke Akua、通称:モカ)マウイ復興センターに引き渡す式典が開催された。
引き渡しプロジェクトは、同島で2023年8月に発生した大規模な山火事の被害を受けたマウイ島住民のために「何か力になりたい」という岩谷産業の思いからスタートし、NIPPON EXPRESSホールディングスの米国グループ会社のNXアメリカ、「ドン・キホーテ」など店舗を展開するPPIH(注)、JTBの米国グループ会社のJTBハワイトラベルが賛同して実現した。具体的には、岩谷産業の米国子会社の米国岩谷はカセットコンロ1,000台を無償でモカ・マウイ復興センターに提供、NXアメリカはロサンゼルスからマウイ島までのカセットコンロの輸送、PPIH子会社のPPRMは現地スーパーの「タイムズ・スーパーマーケット」でカセットボンベの割引販売(注)、JTBハワイトラベルは引き渡し式の運営協力といったかたちでそれぞれ支援を行った。また、日米協会ハワイはマウイ島関係者との連絡・調整など、カセットコンロの受け入れ態勢の構築に係る支援を実施した。ジェトロは、こうした関係企業や、在ホノルルと在ロサンゼルスの日本総領事館、関係団体、マウイ郡政府などとの連絡・調整を行った。
カセットコンロ1,000台は、在ロサンゼルス日本総領事館を含む関係者が立ち会いつつ、11月11日にロサンゼルス港を出発し、20日にマウイ島へ到着した。22日の引き渡し式には、上記の日系企業とモカ・マウイ復興センターに加え、マウイ郡政府や在ホノルル日本総領事館、ジェトロなど引き渡しに携わった関係者が出席した。米国岩谷は「これまで当社の製品はさまざまな災害時にライフラインとして機能してきた。今回もマウイ島の人々の助けになると考えている。いち日系企業として、また、1人の日本人として、マウイ島の復興に貢献できることを光栄に思う」と発言した。また、在ホノルル日本総領事館の井澤幹生首席領事は「この寄付は多くの企業や機関の協力があって実現した。強力なフレンドシップを誇りに思う。総領事館としても、引き続き関係機関と連携しながら、マウイ島の復興にコミットしていきたい」と述べた。マウイ郡長室チーフスタッフのレオ・カイレス氏は「今回の支援は必ず被災した住民の助けになる。みなさんのご支援に心から感謝している」と謝意を示した。式典終了後には、出席者間で復興を祈りながら懇親する時間が設けられ、実際に引き渡されたカセットコンロを使用して、日本産ホタテでバーベキューを行った。今後順次、マウイ島の住民に配布される予定となっている。
カセットコンロ出荷時の立ち会い(在ロサンゼルス日本総領事館提供)
被災地に提供されるカセットコンロ(ジェトロ撮影)
引き渡し式の様子(ジェトロ撮影)
関係者の集合写真(ジェトロ撮影)
日本産ホタテを使用してのBBQ(ジェトロ撮影)
被災地域では引き続き支援に期待する声も
引き渡し式に出席したモカ・マウイ復興センター職員は「災害から3カ月が経ち、少しずつ復興が進んでいるところもある一方で、まだホテルやビーチのテントで生活している被災者もいる。風が強くても野外で利用できる今回のガスコンロの提供は本当にありがたく、心から感謝している。必要としている人々に責任を持って届けたい」とコメントした。
ジェトロが実際に現地を視察したところ、市街地など一部地域では住宅などの再建が進んでいたが、復興がまだ進んでいない区域も多々見受けられた。また、現在抱えている課題について、引き渡し式の出席者にジェトロがヒアリングしたところ、仮設住宅や、学校用途のモジュール式建築物、簡易トイレ、サニタリー関連物資などの不足が多く挙げられた。品質の高い日本製の施設・物資に対する期待の声も上がった。ジェトロは引き続き、マウイ島の復興に向けた支援に取り組んでいく。
マウイ島被災地の様子(ジェトロ撮影)
(注)PPIHは、「ドン・キホーテ」や「タイムズ・スーパーマーケット」などハワイ州内に合計28店舗を展開しており、住民生活に密着している。今回の山火事で一部店舗が被災した。
(堀永卓弘)
(米国、日本)
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