欧州ではウクライナ情勢と人材確保が課題、インフレも負担に
(欧州)
調査部欧州課
2023年12月26日
ジェトロが12月26日に公表した「2023年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」(2023年12月26日記事参照)によると、調査時点(2023年9月)で在欧州日系企業が直面する経営課題の1位は「ウクライナ情勢」(回答割合55.4%、前年比6.3ポイント減)、2位は「人材の確保」(55.0%、0.2ポイント増)で、1位、2位は前年と同じ順だった。3位には「インフレ」(53.4%、3.5ポイント増)が前年の4位から浮上した。
西欧での経営上の課題は欧州全体と同じく、1位が「ウクライナ情勢」(回答割合53.3%、前年比7.4ポイント減)、2位が「人材の確保」(52.5%、0.9ポイント減)、3位が「インフレ」(49.0%、1.3ポイント増)だった。業種別にみると、製造業での1位は「人材の確保」(56.3%、1.7ポイント増)だったが、同項目は非製造業では2位で(49.4%、3.0ポイント減)、製造業の企業の方が課題視している割合が多かった。
中・東欧での経営上の課題は、「労働コスト上昇率の高さ」(回答割合75.4%、前年比3.0ポイント増)が1位となり、欧州全体では4位だったこの課題が中・東欧では最大の課題となった。同率で1位だったのが「インフレ」(75.4%、14.0ポイント増)で、前年から割合が大きく上がり、「人材の確保」(67.5%、5.3ポイント増)が続いた。業種別にみると、製造業での1位は「労働コスト上昇率の高さ」(78.8%、4.1ポイント増)、非製造業での1位は「インフレ」(73.2%、15.5ポイント増)だった。
前年までは上位15に入らなかった「炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入」は、2023年に中・東欧で経営課題の14位(回答割合27.0%、前年比18.3ポイント増)となった。製造業で32.9%の企業が課題視していたことが反映された。
前年から課題視する企業割合が増えた「インフレ」を国別にみると、回答割合上位6カ国〔セルビア(EU非加盟国)、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、オーストリア、チェコ〕のうち5カ国を中・東欧の国が占めた。上位6カ国のインフレ率はEU加盟国平均を上回って推移したが、次第に上げ幅は縮小しており、今後はインフレの負の影響が軽減されていくことが期待される(添付資料図参照)。
調査結果の詳細は、ジェトロ調査レポート「2023年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」を参照。
(二片すず)
(欧州)
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