米IBMとメタ、オープンソース化によるAI開発を推進する国際団体を発足、日本企業も参加

(米国、日本)

ニューヨーク発

2023年12月11日

米国IBMとメタは12月5日、責任ある人工知能(AI)の開発や利用を促進するため、世界中の大手IT企業や学術機関で構成される国際団体「AIアライアンス」を発足すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。創設メンバーには、インテルやデル、オラクル、ソニーグループなどの大企業をはじめ、AI関連のスタートアップやイエール大学、東京大学、慶応義塾大学など50以上の組織が参加している。

AIの業界では、各社がそれぞれ技術開発を進める中、責任あるAI開発を実現するためのアプローチとして、データや技術の「オープンソース化」と「クローズドソース化」(注)の2種類に焦点が当たっているが、このうちAIアライアンスはオープンソース化の推進に向けた取り組みとなる。発表によると、AIアライアンスは、企業や学術機関、政府といった幅広い主体が集まってAI分野のイノベーションを支援することを目的として設立された。AIのイノベーションをより速く、包括的に進めつつ、リスクを事前に特定・軽減するためにはより多くの協力や情報共有が役立つとされ、オープンなコミュニティを形成し、科学的厳密性、信頼、安全性、セキュリティー、多様性、経済的競争力を確保しつつも、開発者や研究者が責任あるAIのイノベーションを加速することに重点を置いている。

同団体が責任あるAIを促進するための具体的取り組みとして、次の6つの目標を揚げている。

  1. AIシステムの責任ある開発と利用を実現するためのベンチマークや評価基準の構築
  2. オープンな基盤モデルのエコシステムの責任あるかたちでの推進
  3. 活気あるAIハードウエアのアクセラレーターエコシステムの育成
  4. グローバルなAIスキルの構築と探索的研究の支援
  5. 一般市民や政策立案者に向けた教育コンテンツやリソースの開発
  6. 責任あるAIを開発・展開していることを示す、AIアライアンスによる活動事例の紹介

他方、AIアライアンスに加わっていないグーグルやマイクロソフト、オープンAI、アンスロピックはクローズドソース化のアプローチを志向するとされており(テック専門ニュースサイト「PYMNTS」12月5日)、これら4社は2023年7月、独自の業界団体「フロンティア・モデル・フォーラム」を立ち上げている。

(注)PYMNTSによると、オープンソース化のアプローチは、ソフトウエアを構成するプログラムであるソースコードを無償で一般公開する方法で、コラボレーションやコミュニティ主導の開発を促進する一方、セキュリティーや品質管理が懸念される。他方で、クローズドソース化のアプローチはソースコードを非公開とするもので、独自のシステムの中で最適化されたサービスを提供できる利点があるものの、透明性や説明責任、潜在的なバイアスについての懸念が提起されている。

(樫葉さくら)

(米国、日本)

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