アジアの脱炭素化プロジェクトに官民融資、シンガポールがCOP28で発表

(シンガポール)

シンガポール発

2023年12月04日

シンガポールのテオ・チーヒエン上級相兼国家安全保障調整相は12月2日、ドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の首脳級会合で、アジアにおける脱炭素化プロジェクトに、官民で融資する新たなイニシアチブを発表した。東南アジアを中心とした環境関連プロジェクトに必要な資金を官民から資金到達する「ブレンドファイナンス」の枠組みを通じて、総額で最大50億米ドルの融資を目指す。

テオ上級相は演説で、アジアでは環境関連の投資資金として2030年までに毎年1兆7,000億ドルの資金が必要だと指摘した。発表によると、同新イニシアチブ「アジアの脱炭素化への移行(トランジション)融資パートナシップ(FAST-P)」は、官民連携によるブレンドファイナンスによって脱炭素化プロジェクトのリスクを低減し、融資するというもの。シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)、同国財務省傘下の投資会社テマセク・ホールディングス、環境に特化した投資団体アライド・クライメート・パートナーズ(ACP、本部シンガポール)と国際金融公社(IFC)は同日、アジアの環境インフラに必要な資金ギャップを解消するための覚書(MOU)に調印した。

FAST-Pが融資対象とするのは、(1)再生可能エネルギーへの移行、(2)再生エネルギー事業の拡大や電気自動車(EV)インフラなど成熟した環境技術、(3)水素や二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)など新規環境技術、のプロジェクトとなる。テマセクのディルハン・ピレイCEO(最高経営責任者)は報道発表で、「気候危機は単独で解決できない。ブレンドファイナンスは、東南アジアの新興国および途上国におけるグリーン投資を加速させるカギとなる」と述べた。

MAS、持続可能な融資対象分類「タクソノミー」を発表

また、MASは123日、8つの経済分野について気候変動対策に貢献する融資対象を分類した「シンガポール・アジア環境融資のためのタクソノミー(シンガポール・アジア・タクソノミー、注)」を発表した。同タクソノミーは、エネルギー、不動産、輸送、農業・森林・土地利用、工業、情報通信技術、ごみ処理、CCSの8分野について、融資対象とする持続活動な事業活動を詳細に分類した。MASのラビ・メノン長官は、次のステップとして同タクソノミーと、EUと中国のタクソノミーとそれぞれの相互運用を強化する考えを示した。

(注)2023年度シンガポール・アジア・タクソノミーはMASのホームページPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照。

(本田智津絵)

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