チェコセミナーを浜松市とジェトロが共催、IT産業に注目

(浜松、チェコ)

浜松発

2023年12月19日

浜松市とジェトロは「浜松市海外ビジネスセミナー 〜東欧(チェコ)編〜」を12月13日に、浜松市にあるインキュベーション施設FUSEで開催した。同セミナーでは、ジェトロの志牟田剛プラハ事務所長および在日チェコ商工会議所の渡邉ロマン会頭が登壇した。浜松では、繊維・楽器、光技術、電子技術関連などの先端技術産業や自動車産業の地盤があり、同分野への関心が高い。それらを踏まえて、今般チェコに関するセミナーを開催した。

まず、志牟田所長が、チェコの経済概況に加え、スタートアップの動向などについて解説した。チェコ経済はGDPに占める製造業の割合が比較的高く、欧州における自動車産業などの製造拠点として位置づけられている。一方で、欧州の中ではまだ規模が小さいものの、中・東欧のスタートアップ向けの出資が拡大傾向にあると説明した。オランダのベンチャーキャピタル(VC)調査会社ディールルームが2022年11月に発表した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、VCによる中・東欧のスタートアップに対する投資額は2017~2022年の5年間で7.6倍に増加しており、欧州域内で最も高い伸び率となっている。また、光産業や宇宙産業などではEU域内のネットワークを活用した研究・開発拠点になっており、かつ、最近では欧米のIT企業が研究・開発拠点をチェコに設立する事例も目立ち、IT人材にも強みを持っていると語った。

写真 志牟田所長の講演の様子(ジェトロ撮影)

志牟田所長の講演の様子(ジェトロ撮影)

次に、渡邉会頭は、チェコの産業における歴史的な変遷について解説した。チェコの伝統的な産業としてビール、ガラス、化粧品の製造、そして自動車産業の発達にもつながった製鉄産業などを挙げた。対して、近年、発達が著しい産業として、ナノテクノロジー、セキュリティーや人工知能(AI)、ロボティクスなどの情報通信技術(ICT)、そしてスタートアップを挙げ、伝統的な産業構造から脱し始めている様子について説明した。また、チェコでは、IT関連の投資案件が増加傾向にある状況にも触れた。渡邉氏は、IT分野に注力が集まっている理由としては、「何かを作りたい」というチェコ人のエンジニア気質があることを指摘。かつてはモノづくりにそのベクトルが向いていたが、現在ではその対象がITに代わっているのではないかと見解を述べた。

写真 在日チェコ商工会議所の渡邉会頭の講演の様子(ジェトロ撮影)

在日チェコ商工会議所の渡邉会頭の講演の様子(ジェトロ撮影)

講演後、参加者からは多くの質問があり、チェコでのビジネスやチェコ企業とのビジネスを前向きに検討している様子がうかがわれた。

(田辺知樹、志牟田剛)

(浜松、チェコ)

ビジネス短信 374474e4288aca56