米カリフォルニア州、水資源の安定供給に向け160億ドル規模のインフラ現代化プロジェクトを承認

(米国)

サンフランシスコ発

2023年12月28日

米国カリフォルニア州水資源局(DWR)は12月21日、カリフォルニア州内の水資源関連インフラを現代化する「デルタ輸送プロジェクト」を承認したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同プロジェクトは、サンフランシスコの東に位置するサクラメント・サンホアキン川デルタ地帯の水資源を活用し、ベイエリアおよび南部カリフォルニアに住む2,700万人以上の州民と75万エーカー(約30万ヘクタール)の農地に対し、一本のパイプラインを通じて安全な水を安定して供給することを目的としている。

カリフォルニア州では、降雨が特定の時期と場所に集中しており、主要都市やその近隣では水資源の確保が課題だ。さらに発表によると、サクラメント・サンホアキン川デルタ地帯を経由して水を供給してきた既存の水路やダムのネットワークは老朽化し、地震の脅威や気候変動による異常気象(2023年1月20日記事参照)に耐える能力がないとされており、インフラの現代化による安定供給が急務だ。

デルタ地帯からの水資源輸送システムの現代化に向け、ジェリー・ブラウン前州知事(民主党)は45マイル(約72.4キロ)の2つのパイプラインを敷設する構想を提唱していた。しかし、近隣住民や環境団体からは環境や農業、漁業への影響に対する懸念の声があがっていたことから、ギャビン・ニューサム知事(民主党)は2019年の州知事就任後間もなく、環境への影響を軽減するためにブラウン前州知事の構想を縮小し、1つのパイプラインを建設するプロジェクトを提案した。

DWRは2023年12月8日、この提案に基づきプロジェクトの環境への影響を評価した最終報告書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。最終報告書では、デルタ輸送プロジェクトを通じた州の水資源インフラの現代化により、雨季の水を貯蔵することで乾季に対応でき、異常気象による損失を最小限に抑え、地震による水供給の分断を回避するとされている。また、懸念された環境への影響を軽減するため、水質と漁業を守るための規制の順守や漁業保護のための規則の追加、地域のコミュニティーが資源を確保するための福祉プログラムもプロジェクトに含まれていると記されている(注)。

プロジェクトの費用は160億ドルと推定され、2024年半ばのアップデートを予定している。「サンフランシスコ・クロニクル」紙電子版(2023年12月8日)によると、パイプラインの建設費用は、水資源の供給先である水道公共サービス会社が負担する予定で、今後2年間で資金調達先をかためる予定とされている。

(注)プロジェクトが承認された12月21日、DWRが最終報告書を認証し、環境面のレビューを完了したことが併せて発表されている。

(松井美樹)

(米国)

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