連邦議会、税制簡素化の憲法改正法を公布、産業界は改革に一定の評価

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年12月25日

ブラジル連邦議会の上下両院は12月21日、税制を簡素化して企業活動の税務負担を軽減することを目的とした12月20日付憲法改正法第132号を公布した。同法の法案だった2019年憲法改正法案45号(PEC 45/2019)は7月7日に下院議会が可決した後(2023年7月19日記事参照)、上院でも可決したものの、修正があった部分についてのみ、下院で再び審議し(2023年11月30日記事参照)、12月15日にあらためて下院で可決した。

公布された憲法改正法は上院で可決した法案の内容をおおむね採用した(注)。主な内容は次のとおり。

  1. 州税の商品流通サービス税(ICMS)、市税のサービス税(ISS)、連邦税の工業製品税(IPI)、2種類の連邦社会保障負担金である社会統合基金(PIS)と社会保険融資負担金(Cofins)を廃止する。
  2. ICMSとISSの代替として、財サービス税(IBS)を新設する。また、IPI、PIS、Cofinsの代替として、財サービス負担金(CBS)を新設する。
  3. 付加価値税(IVA)相当として、上記IBSとCBSをそれぞれ課税する。

ただし、公布された憲法改正法では、IPIは完全には廃止されないこととなった。北部アマゾナス州のマナウス・フリーゾーン(ZFM)の優位性を保護するため、ZFMで生産している製品が他の地域で生産される場合、IPI課税の対象となる。

ブラジル工業連盟(CNI)のリカルド・アルバン会長は12月15日付のCNI公式サイトで「新しい税制度で産業界の競争力を妨げる問題の多くがなくなると思われる」と述べた。ブラジル銀行連盟(FEBRABAN)のイザック・シドネイ会長も20日付のFEBRABAN公式サイトで「税制改革によってブラジル経済の効率も生産性も相当向上するだろう」と税制改革を評価した。一方、サンパウロ州商業連盟(Fecomercio-SP)は15日付公式サイトで、IBSとCBSの税率がいまだに設定されていないことなど不安要素が多いとして、批判的な視点を提示した。

IBSとCBSは2026年に導入され、ICMS、ISS、PIS、Cofinsは2033年までに段階的に廃止される予定。IPIは2027年以降、ZFMで生産している製品が他の地域で生産される場合のみ課税されることとなる。

(注)憲法改正案の場合、上下両院の合意がない限り、審議が継続する。12月15日付現地紙「グローボ」によると、下院であらためて修正があったものの、ロドリゴ・パシェコ上院議長とアルトゥル・リラ下院議長は下院でPEC 45/2019を担当していたアギナルド・リベイロ下院議員、上院で同法案を担当していたエドゥアルド・ブラガ上院議員との話し合いで、上下両院が認めることのできる文章を作成したため、上院で再び審議する必要はなくなった。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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