税制改革法案が上院議会で可決、再び下院審議へ

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年11月30日

ブラジルの上院議会で11月8日、税制を簡素化して企業活動の税務負担を軽減することを目的とした2019年憲法改正法案45号(PEC 45/2019)が可決された(注1)。同法案はすでに7月7日に下院議会で可決された後(2023年7月19日記事参照)、上院で可決されたものの、修正があった部分についてのみ、再び下院で審議が行われる(注2)。

上下両院の合意が得られた内容は次のとおり。

  1. 州税の商品流通サービス税(ICMS)、市税のサービス税(ISS)、連邦税の工業製品税(IPI)、2種類の連邦社会保障負担金である社会統合基金(PIS)および社会保険融資負担金(Cofins)を廃止する。
  2. ICMSおよびISSの代替として財サービス税(IBS)を新設する。また、IPI、PISおよびCofinsの代替として財サービス負担金(CBS)を新設する。
  3. 付加価値税(IVA)相当として上記IBSとCBSをそれぞれ課税する。

また、IBS、CBSの税率については今後、法律などで設定されるが、減税対象、あるいは対象外になる商品およびサービスについては既に特定されている。例えば、下院で可決された法案では、基礎的食糧品および生活用品や医療品などは免税、交通機関や農産物などは6割の減税対象となっている。一方、燃料や金融サービスなどはIBS、CBSの対象外とされている。このような例外となる分野を定める特別税制が今後、法律で制定されることが見込まれている。

産業界、特別軽減措置の拡大による増税圧力を警戒

上院公式サイトによると、今回可決された法案ではこのような例外分野が下院可決時の33から42に増加した。例えば、上院で追加された、弁護士、医師、技師などが提供するサービスにかかるCBS、IBSを3割減税とする項目はその一例だ。ブラジル全国工業連盟(CNI)は11月9日付公式サイトで、上院での可決を評価したが、例外分野の増加を批判した。CNIは、減税や免税など例外分野が多くなると、IBSおよびCBSの一般的な税率が高くなり、経済成長の制約になると懸念している。一方、財務省のベルナール・アピー税制改革局長は11月11日付現地紙「グローボ」のインタビューで、「例外分野が少ないほうが理想だが、(上院議員の理解を得るために)そのコストを負うしかなかった」と述べた。

法案がこのまま公布、施行された場合、IBSおよびCBSは2026年に導入される予定。ICMS、ISS、IPI、PIS、そしてCofinsは2033年までに段階的に廃止される予定。

(注1)憲法改正手続きは国会の上下両院で2回ずつ行われ、議員投票の5分の3以上の票が得られた場合に承認される。

(注2)憲法改正案の場合、上下両院の合意がない限り、審議が継続する。ただし、合意が得られた内容のみを公布することも可能。アルトゥル・リラ下院議長は11月7日付現地紙「グローボ」のインタビューで部分的な公布への支持を表明したが、ロドリゴ・パシェコ上院議長は11月10日付同紙のインタビューで「まだわからない。税制改革は非常に繊細な仕組みだ」と慎重な考えを示した。11月21日付同紙によると、現時点では部分的な公布への支持は高くない。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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