米フラッグシップ・パイオニアリング、初の国外拠点の英国オフィスを公式開設

(英国、米国)

ロンドン発

2023年12月18日

米国のベンチャー育成企業フラッグシップ・パイオニアリングは11月28日、初の米国外の拠点として2023年に設立していた英国オフィスを公式に開設したと発表。同社は、2000年に米国マサチューセッツ州ケンブリッジに設立され、バイオテクノロジーに特化したベンチャーを連続的に生み出すスタートアップスタジオ(注)。現在までに100社以上のベンチャー企業を創出・育成し、時価総額は累計900億ドル以上。新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンを開発した米モデルナもそのうちの1つだ。自社内で多様な事業仮説の生成から、実現可能性の検証、内部ベンチャーの設立までを手掛けるラボを構築し、外部から最適な人材を登用することで、製品のスピンアウトまでを手掛ける一気通貫のプロセスを採用しているのが特徴だ。同社は11月8日に、シンガポールへの地域ハブ開設を発表しており、アジア太平洋地域への進出も進めている。

英国政府はフラグシップ・パイオニアリングとの覚書締結に向けて準備を進めている。覚書には、英国を拠点とした臨床試験の実施や、国内のゲノミクス関連組織との連携、イノベーションの機会を特定するために政府が開発しているプロセスへのフラグシップ・パイオニアリングの早期からの参画などを定めることになる。 さらに、同社は11月21日、米国と英国に研究施設を有するクオシェント・セラピューティクス(Quotient Therapeutics)の立ち上げに5,000万ドルを投資したことを発表。 フラッグシップ・パイオニアリングにとって、米国と英国の2カ国に拠点を持つ初めての企業となる。フラッグシップ・パイオニアリングの英国拠点シニアバイスプレジデントのトム・キバシ氏は「フラッグシップが設立した40社以上の企業を英国のライフサイエンス・エコシステムにつなげ、パートナーシップや協力関係を育むことを楽しみにしている」と述べた。

英国政府は2023年5月にも、ライフサイエンス分野を活性化し、経済成長を推進する計画「成長のためのライフサイエンス」を発表、6億5,000万ポンド(約1,176億5,000万円、1ポンド=約181円)の資金を投資することを発表している(2023年6月2日記事参照)。

(注)スタートアップスタジオとは、経験豊富な起業家、イノベーター、投資家を集め、スタートアップ企業を立ち上げるための知識とリソースを提供する組織。

(榊原達也)

(英国、米国)

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