2024年のGDP成長率は2.7%へ減速、地政学リスクで不確実性増す、OECD見通し

(世界)

調査部国際経済課

2023年12月01日

OECDは11月29日、最新の「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、2023年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を2.9%、2024年は2.7%と予測した。前回の9月予測と比較して、2023年は0.1ポイントの下方修正、2024年は据え置いた(添付資料表参照)。

OECDは、経済は予想に反して底堅さを示したと評しつつも、「金融引き締め、貿易の低迷、景況感・消費者信頼感の低下の影響が顕在化し、世界の経済成長率は小幅にとどまる」とした。世界の経済成長率は2024年前半まで低迷した後に緩やかに回復するとし、2025年は3.0%と予測した。

OECDのマティアス・コーマン事務局長は「世界経済は引き続き低成長とインフレ上昇という課題に直面する」と述べ、過去2年間にわたる金融引き締めの結果として、2024年は緩やかな減速が見込まれるとした。他方、OECD加盟国のインフレ率は、2023年の7.0%から、2024年は5.2%、2025年は3.8%と低下を続ける見通しで、「2025年までにはほとんどの国・地域で中央銀行のインフレ目標値に戻る」と予測する。

2024年と2025年の世界経済の成長は前年に続き、半分以上を中国、インド、インドネシアなどのアジアの新興国経済の伸びに依拠する見込みだ。2024年の主要国・地域の成長率をみると、米国は金融引き締めによって内需と雇用の伸びは鈍化するとして、1.5%の予測。2025年は1.7%へわずかに回復する見込み。ユーロ圏は、ロシアによるウクライナ侵攻やエネルギー価格高騰の影響により、しばらく低成長が続く見通しだが、インフレ率の低下に伴う金融緩和への期待から、前年の0.6%から0.9%にわずかに改善する。中国は、2023年は5.2%、2024年は4.7%、2025年は4.2%と、不動産分野の不調と家計貯蓄率の高止まりによって成長率は低下が続く予測となった。

OECDは、短期的な世界経済の見通しは依然として下振れリスクが高い傾向にあると指摘する。特に不確実性を高めている要因に、ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃後の紛争に起因する地政学的リスクの高まりを挙げ、今後のエネルギー市場や主要な貿易ルートへの混乱などの影響を危惧する。このほか、貿易面では、貿易管理規制の強化や、主要国・地域の内向きな政策、グローバルバリューチェーンの再編などが不透明な見通しを助長するとした。一方、成長シナリオとしては、新型コロナウイルス禍以降に蓄積された余剰貯蓄を家計が積極的に活用することで個人消費が拡大し、成長率を押し上げる可能性を挙げた。

(田中麻理)

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