カナダ政府、石油・ガス部門のGHG排出の上限設定する枠組み発表

(カナダ)

トロント発

2023年12月13日

カナダ政府のスティーブン・ギルボ環境・気候変動相と、ジョナサン・ウィルキンソン・エネルギー・天然資源相は12月7日、石油・ガス部門からの温室効果ガス(GHG)排出枠に上限を設定するカナダの枠組みについて発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2030年の排出量を2019年比で35~38%削減を求める。ただし、2019年比で20~23%削減の水準まで排出することも許容しており、上限を超えて排出した場合には、他社から排出枠を購入、もしくは政府が創設する脱炭素化基金への拠出のいずれかで超過分が相殺可能となる。

カナダの石油・ガス部門によるGHG排出量は、2021年時点で国内総排出量の28%を占め、最大の排出源となっている(2023年9月27日付地域・分析レポート参照)。

石油・ガス部門にGHG排出量枠を設定する構想は、2021年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でジャスティン・トルドー首相が主要産油国の中で初めて明らかにしていた(2021年11月2日記事参照)。その後、2022年3月発表の「2030年排出削減計画」の一部として提案、同年7月にはディスカッションペーパーが公開され(2022年7月27日記事参照)、産業界などの関与を経て今回の枠組み案が策定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。政府は枠組み案へのコメントを2024年2月5日まで募集後、2025年に最終規則の公表を目指す。早ければ2026年に報告義務を開始、2026~2030年での段階的な導入を検討している。

ギルボ大臣は「カナダ最大の排出部門からの排出量に上限を設定し、排出量を削減するカナダ政府の計画は野心的であると同時に現実的だ。世界的な石油・ガス需要と、カナダ経済に占める石油・ガス部門の重要性を考慮し、厳しくも達成可能な上限を設定している」とコメントした。

一方、産油州は反発を強めている。アルバータ州のダニエル・スミス州首相は同日声明を発表し、「アルバータ州の石油・ガス部門に対する事実上の生産量制限の発表は、アルバータ州の経済と、何百万人ものアルバータ州民とカナダ国民の経済的安定に対する、連邦政府による意図的な攻撃だ」とコメントした。

(飯田洋子)

(カナダ)

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