住友電工が高機能・高耐熱電線などの製造会社設立、日系企業の投資続く

(メキシコ)

メキシコ発

2023年11月02日

住友電気工業は10月30日、メキシコ・アグアスカリエンテス州での自動車向けリチウムイオン電池用のタブリード(注1)や高機能/高耐熱電線などを製造するジュド・ワイヤー・メキシコ(Judd Wire Mexico)の設立を発表した。自動車・モビリティ分野におけるCASE(注2)の進展に伴い、北米での高機能電線/配線材の需要が大幅に拡大すると見込んでいる。

今回の投資は9月14日、アグアスカリエンテス州政府が開催した新規投資発表会で発表されていた。同発表会には、マリア・テレサ・ヒメネス・エスキベル・アグアスカリエンテス州知事も参加した。初期投資額は2,500万ドルで、まずは300人の雇用を予定している。

在メキシコ日系企業のうち自動車関連産業では、5月にモーターコア製造大手の三井ハイテックが子会社設立を発表し、6月には完成車メーカーのトヨタの追加投資が発表された(2023年6月12日記事参照)。その後、電子部品・半導体販売大手の加賀電子がEMS(注3)生産体制の強化に伴いサンルイスポトシ工場拡張を発表、鋼管メーカー大手の丸一鋼管が北東部ヌエボレオン州に新たな鋼管製造工場建設を発表、そして鉄鋼などを扱う商社の岡谷鋼機が同じくヌエボレオン州でのサテライトオフィス設立を発表するなど、主に北米市場の需要拡大を見据えた追加投資の発表が続いている。

メキシコ国内市場では電気自動車(EV)の普及が遅れているものの、メキシコ国内の自動車生産の約7割が米国向けのため、国内市場での普及とは関係なく、メキシコ自動車産業のEV化は進む。このことを背景に、欧米メーカーを中心にEV生産投資の発表が相次いでいる状況だ(2023年10月20日付地域・分析レポート参照)。また、EV関連に限らず、主にニアショアリングの観点から調達の現地化を狙ったバイヤーからの、メキシコ国内に拠点を持つサプライヤーに対する関心は高まっている。新規・追加投資を発表した日系企業にとっても追い風が吹いている。

(注1)タブリード:リチウムイオン電池などから、電気を取り出すためのリード線のこと。

(注2)CASE:自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。

(注3)Electronics Manufacturing Service の略語。電子機器の開発・生産を受託するサービスを指す。

(渡邊千尋)

(メキシコ)

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