米アマゾン、米国で会員向けに診療サービスを導入、月額9ドルから

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月16日

米国アマゾンは11月8日、定期購入サービス「アマゾンプライム」の米国会員を対象とした診療サービスを導入すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の発表は、アマゾンが2022年に買収したプライマリーケア(初期診療)の医療サービスを提供するワン・メディカル(2022年7月27日記事参照)のサービスを、米国のアマゾンプライム会員が割引価格で利用できるようにするものだ。通常は年会費199ドルのところ、プライム会員は月額9ドル、または年会費99ドルを支払うことで、スマートフォンのビデオ通話などで24時間態勢の遠隔医療サービスを受けられるほか、専用アプリを通じて処方箋の管理や医療従事者とのメッセージのやり取り、診療後のフォローアップなどが利用できる。米国では家庭医の初期診療を受ける際には予約が必要となり、受診まで数日かかることもあるが、同サービスを利用すれば、遠隔サービスのみならず、全米各地にあるワン・メディカルの診療所で当日または翌日に対面でも診察を受けることが可能になる。受診の際は、自身が加入する医療保険も利用できる(無保険の場合は自費診療)。

アマゾンのみならず、近年、大手小売り各社が医療分野に注力する傾向が強まっている。米国小売り大手のウォルマートは2023年3月、同社の店舗に併設するヘルスケアセンター「ウォルマート・ヘルス」を2024年までに28カ所開設し、全米で75カ所に展開する計画を発表した。そのほか、米国家電量販店大手のベストバイは2021年10月、遠隔患者モニタリング、遠隔医療、患者エンゲージメントの統合によって在宅ケアを容易にするプラットフォームを提供する「カレント・ヘルス」を買収するなど、ヘルスケアと小売業との相乗効果を狙った新たな取り組みを進める動きがみられる(「リテール・タッチポイント」11月9日、3月6日)。

調査会社イーマーケターは、大手小売業者がヘルスケア分野に参入する背景として、米国では医療費の高騰が続いており、消費者が従来の医療機関に不満を抱える中、利用しやすい安価な医療オプションに対する需要が高まっている点を挙げた。こうした需要を踏まえ、店舗型小売りでは、薬局や簡単なケアを行える医療施設(リテールクリニック)など、ヘルスケアハブとなり得る機能を店舗に設置する形態が現れてきている。ヘルスケア部門という新たな収益源を確保するとともに、ヘルスケアと併せて食料品などの多様な商品・サービスをワンストップで購入できるようにすることで、ヘルスケア目的の顧客で来店する顧客を取り込み、新規顧客の開拓にもつなげる狙いだ。今回のアマゾンの取り組みは、遠隔医療サービスも併せて提供することで、店舗およびオンラインのギャップを埋め、消費者の生活における小売業の役割を高めるチャレンジとなりそうだ。

(樫葉さくら)

(米国)

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