マレーシア中銀、政策金利3%に3会合連続で据え置き

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年11月06日

マレーシア中央銀行は11月2日の金融政策会合(MPC)で、政策金利を3%で据え置くことを決定した(中央銀行プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。中銀は政策金利を2023年5月に0.25ポイント引き上げて以降(2023年5月8日記事参照)、3会合連続で据え置いた。

中銀は、現在の金融政策は依然として経済を下支えしており、インフレ率や成長見通しとも整合していると、据え置きの背景を説明。ロイターが10月31日に実施した事前調査でも、回答したエコノミスト30人中28人が据え置きを予想していた。今回のMPCが2023年内最後で、2024年初回会合は1月23~24日に開催される。

中銀は世界経済について、堅調な労働市場環境と内需が拡大を下支えし、特に電気電子分野では回復の兆しも見えると分析した。他方、支出がモノからサービスへ移行していることや、継続的な貿易制限の影響もあり、世界貿易は低迷しているとも指摘した。

マレーシア経済について中銀は、第3四半期のGDP成長率の推計で経済活動の改善が見込まれていることに触れ、2024年の経済も堅調な国内消費や電気電子分野の輸出回復に後押しされると予測した。雇用環境の改善や賃金上昇による家計支出の増加、外国人観光客数とその支出増も好材料だ。投資活動についても、従来からのインフラ事業継続に加え、各種産業政策(2023年9月7日記事参照)の実施や2024年国家予算(2023年10月23日記事参照)に基づく措置も経済を刺激すると見通した。他方で、予想以上の外需低迷や一次産品生産の縮小を下振れリスクとして挙げた。

物価上昇に関しては、コスト圧力の緩和により、総合インフレとコアインフレはともに落ち着いていると指摘。第3四半期の総合インフレ率は前年同期比2.0%、コアインフレ率は2.5%だった。2024 年以降のインフレ率も引き続き低水準で推移すると予測した。他方、マレーシア政府による補助金や価格統制に関する政策変更、世界の一次産品価格や金融市場の動向などが、インフレ見通しを左右する可能性も示唆した。

中銀は、今回の声明で通貨リンギ安にも言及。米国の金利高止まりと地政学的緊張の激化に対する懸念の高まりが米ドル高につながり、リンギを含む他国通貨に影響していると分析した。一方で、リンギ安がマレーシアの経済成長を妨げるものではないとし、中銀としては流動性の提供などを通じてボラティリティーの高まりによるリスクをコントロールし、国内外国為替市場の秩序を維持する姿勢を示した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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