米道路交通安全局、V2V技術搭載義務に関する2017年の規則案を撤回

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月21日

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は11月20日、ライトビークルに車車間(V2V)通信の搭載を義務付ける規則案である「連邦自動車安全基準:V2V通信」の撤回を官報に掲載外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同規則案は、オバマ政権下の2017年1月12日に発表されていた。

V2V通信とは、車両間で速度や進行方向、ブレーキ状態、その他の車両に関する情報を相互に通信するシステムで、交通渋滞緩和による燃料効率の改善や、事故の減少につながるとの期待が寄せられている。規則案では、全てのライトビークルの新車に同技術の搭載が提案されていた。しかし、現在は携帯電話用の無線通信回線(セルラー)を使った車車間通信技術(C-V2X、注1)の採用が増えている中で、規則案は無線LANを使った専用狭域通信(DSRC、注2)技術の搭載を義務付けていることや、2020年11月に 連邦通信委員会(FCC)がDSRC用に確保されていた周波数帯を分割しWi-FiやC-V2X技術用に充てる決定を下したことなどから、NHTSAは撤回を決定した。

州や地方自治体の交通部門などをメンバーとし、交通関連技術の促進活動を行う非営利団体のITSアメリカのローラ・チェイス代表兼最高経営責任者(CEO)は、今回の撤回が「NHTSAを(V2Vを推進する)ゲームから排除するものではない。歴史的な水準で交通死亡事故が発生している現在、NHTSAが再びゲームに復帰し、業界と協力してV2Xを全国規模に拡大するのを楽しみにしている」と述べた(政治専門誌ポリティコ11月20日)。

(注1)Cellular Vehicle to Everythingの略。携帯電話(セルラー方式)用の無線通信回線を使って行われる車車間通信(V2V)や路車間通信(V2I)、歩車間通信(V2P)、車両ネットワーク間通信(V2N)など、車両とさまざまなものの通信を意味する。

(注2)Dedicated Short Range Communications。車両との無線通信に特化して設置された、一方向または双方向の無線LANベースの無線通信技術で、米国では5.9GHz帯が使用されてきた。

(大原典子)

(米国)

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