ロシア産鋼材使用の鉄鋼製品に対するEUの輸入制限に問い合わせ相次ぐ

(EU、ロシア)

調査部欧州課

2023年11月14日

EUが9月30日から適用を開始したロシア産原材料を使用したEU域外国の鉄鋼製品に対する輸入制限により、日本などからの同製品輸入に影響が生じている。域外国で加工された対象の鉄鋼製品をEUに輸入する際、域内の輸入者は同製品に対象のロシア産原材料が含まれていないことを証明する書類の提出が求められる。当該措置はEU理事会(閣僚理事会)が6月23日に採択した対ロシア制裁パッケージ第11弾(2023年6月28日記事参照)で追加されたもので、ロシア産鉄鋼製品に対する輸入制限をさらに強化し、域外国経由の迂回(うかい)を防止することが目的となっている。

当該措置については、EU加盟国当局による運用の差異も指摘されており、11月10日現在、ジェトロにも企業や団体などから問い合わせが多く寄せられている。欧州委員会が発表しているEUの対ロシア制裁の実施に関するFAQ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(よくある質問、注1)などに基づく主なポイントは次のとおり。

対象製品と適用開始日

対象製品は、対ロシア制裁に関する理事会規則(6月23日改正外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の付属書17に含まれる鉄鋼製品(HSコード7206~7229、7301~7326)。既に9月30日から対象製品の大半について当該措置の適用が開始されているものの、一部のCNコード(注2)については2024年4月1日、2024年10月1日と段階的に適用される。

欧州委のFAQによると、(1)付属書17のリストに含まれていないロシア産原材料〔例:鉄スクラップ(HS7204)〕を使用し、域外国で加工した最終製品が付属書17に含まれている場合、(2)付属書17のリストに含まれているロシア産原材料を部品〔例:ネジ(HS7318)〕として使用し、域外国で加工された最終製品が付属書17に含まれていない場合は、いずれも輸入規制の対象とならないとしている。これらの場合でも、鋼材の原産地に関する証明書類が求められる可能性があり、加盟国当局による対応の差異が生じているもようだ。

鋼材の原産地に関する証明書類

欧州委のFAQでは、域外国で加工された鉄鋼製品の原材料の原産地に関する十分な証明書類として、鋼材の品質を証明するミルシート(mill test certificate、MTC)を挙げている。ミルシートについて定型の様式はなく、ミルシート以外の書類の利用については、加盟国当局に判断が委ねられている。他の書類の例として、輸出者または製造者によるロシア産原材料を不使用とした宣言書、インボイス、納品書、サプライヤーによる宣言書などが挙げられている。必要な証明書類の種類は製品によって異なる場合もあるという。

欧州委の対ロシア制裁に関するサイトでは、EU域内事業者向けの問い合せ先として、加盟国当局の連絡先外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを掲載している。

また、欧州委は今後、各国の税関で統一的な運用が図られているかモニタリングを実施するとしている。

(注1)「Check all FAQs」から「Access the consolidated version of the FAQs」を参照(現時点で最新版は10月31日付)。当該措置に関しては、FAQの「Article 3g(1)(d) iron and steel products processed in third countries incorporating iron and steel inputs from Russia」に記載されている。

(注2)EUの域外共通関税を設定するための合同関税品目分類表(CN:Combined Nomenclature)。CNコード7207 11は2024年4月1日から、7207 12 10と7224 90は2024年10月1日から適用。

(土屋朋美)

(EU、ロシア)

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