米NY市、難民問題に対応するための予算修正案を発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月20日

米国ニューヨーク(NY)市のエリック・アダムス市長(民主党)は11月16日、難民申請者の流入が急増している問題に対応するための予算修正案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。難民問題に係る費用は2024~2025年度(注1)の2会計年度で約110億ドルが想定され、NY州と連邦政府からさらなる支援を得られなければ、2025年度には前例のない70億ドルを超える予算不足が見込まれるとした。2023年度には、難民問題に14億5,000万ドルを費やした。

2023年度の予算と実際の支出を照らし合わせた結果、これまでの年度と同様に、難民問題への対処費用、特に難民のための仮住居にかかる費用には慢性的な予算不足があるとしている(注2)。発表ではまた、市内に到着する難民申請者への対策が急務となっている一方で、連邦政府からの新型コロナウイルス対策資金が枯渇し、税収の伸びが鈍化しているとした。このため、アダムス市長は、NY市の警察官の新規採用を凍結し、これにより1980年代以来初めて警察官が3万人を下回ることになると明らかにした(ニューヨーク・タイムズ11月16日)。

NY市へ流入する難民申請者への対処にかかる問題は、新型コロナ禍に始まった(2023年8月6日記事参照)。受け入れた難民申請者に対する労働許可申請の処理が迅速でないために(2023年9月1日記事参照)、収入を得られず仮施設から出られないことも、NY市の財源に負担がかかっている理由とみられる。

こうした問題への対策の1つとして、NY市議会は11月2日、労働者の権利に関する法律を初めて制定した。同法では、労働者は移民であっても、連邦、NY州、NY市の法の下で労働者の権利を保障される。全米最大の地方労働組合であるNY市中央労働協議会は、NYに到着して間もない移民が悪徳な雇用主に利用されない環境を作るとして、同法を前向きに支持してきた。

(注1)NY市の会計年度は7月1日~翌年6月30日。

(注2)NY市の予算案は市長が毎年1月ごろに市議会に提案後、7月1日の会計年度開始前の6月に採択される。その後、市長によって11月、1月、4月の3回にわたり更新される。

(吉田奈津絵)

(米国)

ビジネス短信 9737a051d851f28f