米NY市、難民申請者の増加に伴う負担額を発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月16日

米国ニューヨーク(NY)市のエリック・アダムス市長(民主党)は8月9日、市内の難民申請者が2022年春以降10万人に迫っていることを理由に、州政府と連邦政府が迅速な行動をとらない場合、同市が2023~2025会計年度で120億ドル以上を負担する可能性があると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同市は2023年度、難民申請者のための保護施設、食料、そのほかのサービスに、既に14億5,000万ドルを費やしたと述べている。

NY州では8月4日、NY市内の難民申請者用保護施設が不足していることを受け、州最高裁が当局に対し、対応に苦慮している同市を援助するよう命じた(ゴタミスト8月4日)。同時に、州最高裁は同市に対し、事態解決のために州からの援助が必要な分野を明示するよう命じた(ロイター8月4日)。

近隣のマサチューセッツ州では、モーラ・ヒーリー知事(民主党)が8月8日に緊急事態宣言を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、連邦政府に対し、難民申請者の流入問題に対する資金援助と就労許可発出の迅速化を要請した。

難民申請者を乗せたバスがNY市に到着し始めたのは2022年春ごろで、難民申請者の入国規制を支持するテキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)が、アダムスNY市長の「NY市は移民を寛大に受け入れる」との発言に基づき、難民申請者を同市へ送り込んだことが背景にあるとされる(テキサス・トリビューン2022年8月24日)。テキサス州はこのほか、ロサンゼルス、シカゴ、コロンビア特別区(首都ワシントン)など、民主党員がトップを務める都市に難民申請者を送った。また、フロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)は、テキサス州からマサチューセッツ州に難民申請者を輸送する際の航空機を手配していた(テキサス・トリビューン2022年9月16日)。

NY市に流入した難民申請者は、主に仮設の保護施設や、新型コロナ禍に経営が傾き一時閉鎖されたホテルなどに滞在している。例えば、かつて高級ホテルとして知名度の高かったルーズベルトホテルでは1泊最高210ドル、ホリデーインでは1泊当たり190~311ドルをNY市が負担し、ホテルの所有者に支払っている、と報じられている(ブルームバーグ7月9日)。

(吉田奈津絵)

(米国)

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