2国間枠組みを通じてカザフスタンでGX実現

(カザフスタン、日本)

調査部欧州課

2023年11月08日

11月1日に東京で行われた第8回日本カザフスタン経済官民合同協議会では、グリーントランスフォーメーション(GX)における協力の可能性について両国関係者が議論した。政府間の協力枠組みを活用しながら、カザフスタンにおいて再生可能エネルギーや脱炭素技術を導入していく必要性が指摘された。

協議会の第1分科会で、「GXにおける協力の可能性:カーボンニュートラルと経済成長の両立」というテーマで両国関係者の報告が行われた。経済産業省ロシア・中央アジア・コーカサス室の渡邉雅士室長は、日本が2023年のG7議長国として、カーボンニュートラル実現のためクリーン・エネルギー技術導入の推進に取り組んできたと述べた。9月には西村康稔経済産業相が中央アジア5カ国のエネルギー関係閣僚との対話枠組みを設立したことを挙げ、カザフスタンとGX分野で協力を行い、成果につなげていきたいと期待を寄せた。

経済産業省地球環境対策室の木村範尋地球環境問題交渉官は、10月30日にカザフスタンのアスタナにおいて両国間で2国間クレジット制度(JCM、注)に関する協力覚書が締結されたことに触れ、現地での温室効果ガス削減事業実施に当たって実現可能性調査(FS)や技術導入時に資金面で支援していくと述べた。

カザフスタン環境・天然資源省のヌルラン・クルマラエフ次官は、再エネや二酸化炭素(CO2)の回収・貯留分野での日系企業との協力例を挙げ、ブルーおよびグリーン水素の生産にも関心を示した。

カザフスタンの投資誘致機関「カザフ・インベスト」のレイラ・ギムラノワ・プロジェクト・マネジャーによると、2020年の総発電量に占める再エネ比率が3%のところ、政府は2050年までに50%に引き上げる。ギムラノワ氏は課題として、再エネ発電施設と既存の電力網を接続するため蓄電設備などの投資が必要と指摘した。また、「発電の多くを占める石炭火力はエネルギー安全保障上、止められない」と述べた上で、脱炭素化策として水素燃料の活用を挙げた。

このほか、資源エネルギー庁関係者が、日本が主導して立ち上げた枠組み「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアチブ(AETI)」を通じた各国との協力事例を紹介した。アルマトイに駐在員事務所を置く三菱UFJ銀行は、ファイナンスを通じたカザフスタンのGX実現に貢献していく方針を表明した。IHIは、同社が脱炭素技術として開発する火力発電所でのアンモニア燃焼をカザフスタン側に提案した。

写真 分科会の様子(ジェトロ撮影)

分科会の様子(ジェトロ撮影)

(注)途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度。中央アジアではカザフスタン以外に、2022年10月にウズベキスタン、2023年7月にキルギスと協力覚書を締結している。

(浅元薫哉)

(カザフスタン、日本)

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