2023年に入り2度目の電気料金値上げ、平均4.5%引き上げ

(ベトナム)

ハノイ発

2023年11月20日

ベトナム商工省は11月8日、電気料金の値上げに関する商工省決定2941/QD-BCT号を公布し、電気料金を平均4.5%引き上げると発表した。付加価値税を除いた平均電気小売料金は、1キロワット時(kWh)当たり2,006.79ドン(約12.4円、1ドン=約0.0062円)となる。引き上げ後の料金は、公布翌日の9日から適用。電気料金は用途や時間帯で価格設定が異なり、工業分野では1kWh当たり1,044ドンから3,314ドンの間で価格設定される(添付資料表参照)。

電気料金の引き上げは2023年に入って2度目で、5月に3%引き上げられたばかりだった(2023年5月15日記事参照)。電気料金は年初から平均7.6%上昇したことになる。11月13日付の「VNエコノミー」によると、今回の値上げは消費者物価指数(CPI)を0.16~0.25%押し上げる可能性があるという。韓国系金融会社の未来アセットは、セメントメーカーでは電気代が製品コストの14%から15%を占め、鉄鋼や化学品メーカーでは9%から10%を占めるため、今回の値上げの影響が大きいと分析する。

しかし、電力事業を担う国営企業ベトナム電力総公社(EVN)によると、2023年の発電コストは1kWh当たり2,098ドンと推計され、発電コストが販売料金を上回る逆ざや状態の解消は依然として困難だ。1kWh当たりの発電コストは、2021年1859.90ドン、2022年2,032.26ドンと年々増加している。

2023年の発電コスト上昇の原因は、エルニーニョ現象の影響によるダム貯水量の減少で発電コストが安価な水力発電の出力が低下したことや、それを補うために稼働を増やした石炭火力発電所で使用する石炭の輸入価格が高止まりしていることなどだという。当初の計画では、2023年の水力発電量を8万8,700ギガワット時(GWh)としていたが、実際には7万4,800GWhにとどまる見通しだ。一方、石炭火力の発電量は当初計画の10万9,800GWhが11万9,100GWhとなる見込みだ(「ダウトゥ」紙11月9日)。

それでも、水力の減少分を石炭火力など他の電源では補えきれていない面もあり、2023年夏は北部で電力不足が生じた(2023年6月9日2023年6月29日記事参照)。EVNは2022年1月から2023年8月にかけ、グループ全体で計55兆ドンの赤字を計上しており、今後も厳しい経営状態が続くとみられる。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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