米ニューヨーク市コーネルテックでアーバン・テック・サミット開催

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月17日

米国ニューヨーク(NY)市のルーズベルト島に所在するコーネルテックで、11月14~15日の2日間にわたり「アーバン・テック・サミット(Urban Tech Summit)」が開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。コーネル大学大学院のコーネルテック(注1)のほか、NYを拠点に気候変動問題に取り組む非営利団体のCIV:LABや、コーネル大学とテクニオン・イスラエル工科大学が共同で設立したジェイコブス・テクニオン・コーネル・インスティテュートなどが主催し、学術関係者や政策立案者、スタートアップなど275人以上が参加した。パネルディスカッションやワークショップ、市内スタートアップによるピッチなどを通じて、NY市が都市から生まれるイノベーションを支援しながら今後どのように脱炭素を推し進め、世界の気候変動の課題解決をリードしていくべきかが議論された。

写真 コーネルテックによるオープニングリマークス(ジェトロ撮影)

コーネルテックによるオープニングリマークス(ジェトロ撮影)

1日目は、大都市ならではの課題の建物や空港などインフラ面の脱炭素化などが議論された。NY市では、2019年に成立した「気候変動対策法(Climate Mobilization Act)」の地方法97条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)で定めている「市内で大規模建物から排出される温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに40%、2050年までに80%削減する」という目標が立てられている。これを達成するために、人工知能(AI)やデータを活用したビル管理による省エネや、二酸化炭素(CO2)排出量を抑えた新素材を利用した建設・都市開発といった新技術活用への期待が述べられた。また、新技術に対応できるよう、市民に対するトレーニング機会の提供や、労働力開発の重要性についても意見が交わされた。

2日目は、新技術の社会実装をNY市がどのようにリードするかといったテーマで議論された。コーネルテックとNY市経済開発公社(NYCEDC)による、NY市を都市イノベーションのグローバルハブにするための新しい取り組み「Pilot: New York City外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が紹介されたほか、NY・ニュージャージー港湾局など市内の公的機関が抱える課題をどのようにテクノロジーが解決し得るか、参加者間でアイデアが共有された。今後は実際にNY市が各機関のイノベーション部門と地元大学との連携による実証を支援し、市内スタートアップの成長とともに、脱炭素を含む都市イノベーションを推進していくという。

イベント最後のセッションには、NYCEDCの社長兼最高経営責任者(CEO)のアンドリュー・キンバル氏が登壇し、ライフサイエンスやグリーンエコノミー分野などでイノベーションを推進する市内各所のハブを紹介した。特に2023年9月に開発が発表されたばかりのブルックリン・アーミー・ターミナル(NY市ブルックリン区)のクライメート・イノベーション・ハブ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでの今後のスタートアップ育成、実証支援、労働力開発プログラムの推進が取り上げられた。

写真 NYCEDCのキンバル氏によるプレゼンテーション(ジェトロ撮影)

NYCEDCのキンバル氏によるプレゼンテーション(ジェトロ撮影)

(注1)コーネルテックは、NY市によるハイテク産業育成を狙った2011年の誘致活動に応募し、選定された(2014年10月8日記事参照)。

(注2)地方法97条のもと、延べ床面積2万5,000平方フィートを超える建物は、2024年時点でNY市が定めるエネルギー効率や温室効果ガス(GHG)排出量基準を満たすことが求められる。基準は2030年にさらに厳しくなる(ただし、一部例外あり)。NY市のGHG排出量の約3分の2は建物由来とされている。

(平本諒太、佐道美樹)

(米国)

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