シンガポール中銀、インドネシア、マレーシアとスマホ決済接続開始

(シンガポール、インドネシア、マレーシア)

シンガポール発

2023年11月24日

シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)とインドネシア中央銀行(BI)は11月17日、QR決済の相互接続の正式開始を発表した。また、MASとマレーシアのバンクネガラ(中央銀行)は同日、スマートフォンでの即時送金の相互接続を開始した。

シンガポールとインドネシアは今回、シンガポールの電子決済サービス「NETS」のQRコード決済システムと、インドネシアのQRコード決済システム「QRIS」を相互接続した。この結果、両国の旅行者は双方の国で自分が使用するスマーフォンの銀行決済アプリを用いてQR決済することが可能になった。今回の相互接続サービスに参画する金融機関は、シンガポール側ではOCBCとUOB、さらに、DBSが後日参画予定。インドネシア側がバンク・セントラル・アジア、CIMBニアガ銀行など10行となる。

また、シンガポールのスマートフォンでの即時送金サービス「ペイナウ」(注1)と、マレーシアの同様の「ドゥイット・ナウ(Duit Now)」の相互接続を開始した。今回の相互接続に参画する銀行や金融サービス会社の決済アプリ利用者(注2)は、相手の携帯番号か、仮想送金アドレス(VPA)を用いて、1日当たり最大1,000シンガポール・ドル(約11万1,000円、Sドル、1Sドル=約111円)、または3,000マレーシア・リンギ(約9万6,000円、1リンギ=約32円)を即時送金できるようになった。

シンガポールとマレーシアは2023年3月31日には、QRコード決済の相互接続を開始していた。このほか、シンガポールとタイは2021年4月に、両国の即時送金システムの相互接続を開始(2021年5月10日記事参照)。シンガポールはインドと2023年2月に相互送金システム相互接続を始めている(2021年9月22日記事参照)。

決済システムの相互接続、2国間から多国間へ

今回の相互接続は、シンガポールで11月15~17日に開催されたフィンテック分野の国際会議・展示会「シンガポール・フィンテック・フェスティバル(SFF)2023」で正式発表された。MASは、国際決済銀行(BIS)がシンガポールに設置したイノベーションハブと共同で、決済システムの多国間相互接続の実現を目指す「プロジェクトネクサス」に取り組んでいる。MASのラビ・メノン長官は16日のSFFでの講演で、国際的な相互決済システムの構築を通じて「世界中の人々が国境を越えて、安全で、効率よく、安価に送金できるようにしたい」と述べた。

写真 シンガポール・フィンテック・フェスティバルで、BISとの多国間決済のプロジェクトについて話すMASのラビ・メノン長官(ジェトロ撮影)

シンガポール・フィンテック・フェスティバルで、BISとの多国間決済のプロジェクトについて話すMASのラビ・メノン長官(ジェトロ撮影)

(注1)ペイナウ(Pay Now)は2017年7月から開始した、相手の携帯番号か身分証明(ID)番号でスマートフォンを使って即時送金ができるシステム。2018年8月からは、法人の個別企業登記番号(UEN)を入力すれば、法人向けに即時決済できる「ペイナウ・コーポレート」を開始(2018年8月15日記事参照)。

(注2)即時送金は、シンガポール側が電子支払いサービスのリキッドグループ(Liquid Group)、メイバンク・シンガポール、OCBC、UOB。マレーシア側はCIMB、メイバンク、TNGデジタル(タッチアンドゴー)。その後、参画金融会社や銀行を順次拡大する予定。

(本田智津絵)

(シンガポール、インドネシア、マレーシア)

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