ミレイ次期大統領、国家機構改革と中央銀行債問題を優先的に取り組むと言及

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年11月22日

11月19日に行われたアルゼンチン大統領選挙で勝利した自由前進(LLA)のハビエル・ミレイ氏は、翌20日にラジオ番組に相次いで出演し、12月10日の大統領就任後に優先的に取り組む政策として、公営企業の民営化を含む国家の機構改革と中央銀行債(Leliq)の問題を挙げた。20日付の現地紙「アンビト」(電子版)など複数の報道機関が伝えた。

まず、国家の機構改革については、現在18ある省を国防省、法務省、経済省、人的資源省、外務省、インフラ省、治安省、内務省の8省に集約するほか、国有石油会社YPF、国営放送、国営通信社テラム、アルゼンチン航空の民営化も掲げている。ミレイ氏はYPFについて、政府が保有する発行済み株式の51%を2年かけて売却することを目指すとしている。

次に、Leliqの問題を解消することは、中銀の廃止と為替レートの一本化、資本取引規制の解除を実現するだけでなく、ハイパーインフレ回避に必要不可欠だとした。Leliqは、金融制度の流動性を管理するために中銀が発行する債券で、市場の通貨ペソを吸収し、インフレの発生を防ぐことを目的に、2018年1月に導入されたものだ。Leliqを購入できるのは商業銀行のみで、Leliqを購入した商業銀行は中銀から金利を受け取り、預金者から預かった資金をLeliqの形で保有している。

Leliqの10月27日時点の残高は13兆7,400億ペソ(約5兆4,960億円、1ペソ=約0.4円)で、同日時点のマネタリーベース(注)の約2倍の水準だ。この水準は市場の過剰流動性を示しており、ペソの大幅な下落やハイパーインフレを引き起こすことが懸念されている。ハイパーインフレの影は外貨への過剰な需要を生み出し、資本取引規制の解除を難しくしている。ミレイ氏はLeliq問題の解決方法について、金融工学により解決するとだけ述べた。

ミレイ氏は通貨のドル化についても言及した。ミレイ氏がここ数週間の選挙期間中に主張していたのは、国民が通貨を自由に選択できる「通貨の自由競争」で、それをドル化と呼んだのは国民であり、それは国民がペソよりもドルを選んでいることを示すものだと強調した。中銀を閉鎖することで通貨の自由競争が起き、国民が通貨を自由に選ぶことになる(ドル化する)と主張した。重要なのは中銀を廃止することだと強調した。

(注)市中に出回っている現金の通貨と民間の金融機関が中銀に預けた預金の合計。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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