米財務省、2023年上半期までの為替報告書を公表、ベトナムを監視対象に追加

(米国、日本、中国、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ドイツ)

ニューヨーク発

2023年11月14日

米国財務省は11月7日、為替政策報告書を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。同報告書は半期ごとに議会へ提出しており、財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、今回は2023年6月までの1年間の為替政策を分析・評価した。

今回の報告書では、バイデン政権発足以降のこれまでの5回と同様に、「為替操作国・地域」に該当する国・地域はないと結論付けた。為替操作国・地域の認定は、2015年の貿易円滑化・貿易執行法に基づく3つの基準(注1)の全てを満たしているかどうかを基に判断する。「為替操作監視対象」リスト(注2)には、前回の報告書(2023年6月19日記事参照)で対象となっていた中国、ドイツ、マレーシア、シンガポール、台湾の5カ国・地域のほか、新たにベトナムが加わった。ベトナムは経常収支黒字(GDP比4.7%)と対米貿易黒字(1,050億ドル)の2項目が該当した。一方で、前回監視対象とされたスイスと韓国はリストから外れた。

日本は前回に引き続き、3つの基準のうち1つのみ該当(財・サービス貿易黒字額基準)とされ、監視対象には指定されなかった。このため、報告書での日本に関する言及はほとんどなく、為替介入に関する事実関係の言及にとどまった。

中国については、(1)対米貿易黒字は2,940億ドルと前期からやや縮小したものの、依然として米国の貿易相手国・地域の中で最大、(2)経常収支黒字がGDP比で2.2%に拡大(前回同2.1%)、(3)為替レート管理体制の政策目標やオフショア人民元市場での活動など為替レートメカニズムのカギとなる点について、非常に限られた透明性しか提供しておらず、為替介入を公表していない異例の国と指摘した。財務省は中国による為替管理、資本の流れ、規制措置の利用とそれらが為替レートに与える役割を引き続き注意深く監視していくとした。

(注1)財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、(1)大幅な対米貿易黒字(年間150億ドル以上の財・サービス貿易黒字額)、(2)GDP比3%以上の経常収支黒字、または為替レート評価フレームワーク(GERAF)を用いて財務省が実質的に経常収支「ギャップ」があると推定した場合、(3)持続的で一方的な為替介入(過去12カ月間のうち8カ月以上の介入、かつGDP比2%以上の介入総額)という3つの基準。

(注2)上記3基準のうち2つに該当した国・地域は「監視対象」リストに登録される。登録されると、少なくとも今後2回の報告書で監視対象国・地域として取り上げられ、3つの基準での改善が一時的でなく永続的なものとなっているかどうかについて評価される。

(加藤翔一)

(米国、日本、中国、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ドイツ)

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