EUの2023年上半期の家庭用電力・ガス価格、高値更新も安定の兆し

(EU)

ブリュッセル発

2023年11月07日

EU統計局(ユーロスタット)は10月26日、EUの2023年上半期の家庭用電力価格(税込み)の平均は100キロワット時(kWh)当たり28.9ユーロで、前年同期の25.3ユーロから上昇したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2023年上半期のガス価格(税込み)の平均も100kWh当たり11.9ユーロとなり、前年同期の8.6ユーロから上昇し、電力価格とともに、2022年下半期に続き(2023年5月2日記事参照)、ユーロスタットの記録開始以降の最高価格を更新した。

電力・ガス価格の高騰は、ロシアによるウクライナ侵攻前から始まり、2022年下半期に急騰した。他方、ユーロスタットによれば、電力・ガスの税抜き価格は現在低下しており(注)、EU加盟国はこれまで実施してきた手当・補助金の支給や減税による消費者負担軽減策の一部を終了した。ユーロスタットは、この結果、税込みのエネルギー価格が、前期より若干上昇したとしている。一部は終了したとはいえ、全てのEU加盟国が何らかの負担軽減策を実施したことも反映して、2023年上半期のエネルギー価格に占める税金の割合(前年同期比)は、電力価格は23%から19%、ガス価格は27%から19%にそれぞれ低下している。

2023年上半期の家庭用電力価格(自国通貨)を加盟国別でみると、22カ国で前年同期より価格が上昇した。特にオランダは、減税措置が2022年末で終了し、家庭用電力に対するエネルギー税が倍増した結果、10.5倍と最大の上昇になった。上限価格が設定され、2023年は価格が引き下げられる見込み。このほかでは、リトアニアは88%増、ルーマニアは77%増、ラトビアは74%増などとなった。他方、価格が下がった加盟国は、スペイン(41%減)、デンマーク(16%減)などだった。

2023年上半期の家庭用ガス価格(自国通貨)を加盟国別でみると、前年同期と比べて20カ国で価格が上昇した。特に、ラトビア(2.4倍)、ルーマニア(2.3倍)、オーストリア(2.0倍)、オランダ(99%増)、アイルランド(73%増)などで、大幅な上昇がみられた。他方、エストニア、クロアチア、イタリアは0.6~0.5%の下落となり、リトアニアは横ばいだった。

(注)EUの卸電力市場(スポット取引市場)では、電力価格は天然ガス価格と実質的に連動している(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)。

(大中登紀子)

(EU)

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