第8回日カザフ経済官民合同協議会が開催、脱炭素など新たな分野での協力を議論

(カザフスタン、日本)

調査部欧州課

2023年11月08日

東京で11月1日、第8回日本カザフスタン経済官民合同協議会が開催された。2018年にアスタナで開催されて以来5年ぶりで、この間にコロナ禍、世界的な政治的分断の深化、環境意識の高まりなどにより、ビジネス環境が大きく変わった。これを受けて、今回のテーマは「国際環境の変化に対応した日本・カザフスタン経済関係の新展開―新たな優先分野選定への具体的アプローチ」だった。双方の議長によるキーノートスピーチの後、パネルディスカッション、議事録署名式、分科会に分かれての報告が行われた。

キーノートスピーチでは、日本側議長の保坂伸・経済産業審議官が、9月に開催した「中央アジア+日本」対話・経済エネルギー対話第1回と、10月30日の「2国間クレジット制度(JCM、注)構築に係る協力覚書」の署名に言及し、具体的なプロジェクト実現を通じた両国の関係深化に期待すると述べた。カザフスタン側議長のディナラ・シェグロワ産業・建設省次官は、パンデミック後の貿易振興が急務だと述べ、レアメタル、レアアースをはじめとする様々な投資の有望分野を紹介した。

パネルディスカッションでは、日本側のモデレーターを務めた広瀬直・日本カザフスタン経済委員会会長(丸紅常務執行役員)が、日本とカザフスタンの経済関係は長年、日本からの自動車、カザフスタンからの地下資源という2分野に特化し、安定的だが変化に乏しかったことを指摘した。今後は官民パートナーシップ(PPP)やJCMといった新たな分野で協業のチャンスとなるプロジェクトを提案したいと述べた。そのほか日本側から商社の代表者が、カザフ側と合弁でのウラン採掘、鉱山・建設機械の販売などの実績を紹介した。今後の有望分野としてカーボンニュートラル、グリーントランスフォーメーション(GX)、廃棄物処理が挙がったほか、2024年に就航予定の日本~カザフスタン間直行便を利用した日本産農水産物の輸出にも関心が寄せられた。カザフスタン側からは、日本に対して石油ガスや天然資源といった伝統分野での協力の継続とともに、脱炭素、廃棄物処理、農業分野への投資拡大を望む声が聞かれた。

分科会では、GX、医療やITなどの新分野、輸送・ロジスティックス、エネルギー・鉱物の4つのテーマでプレゼンテーションが行われた。

本協議会の開催は今回で8回目。主催団体は、日本側が経済産業省、外務省、日本カザフスタン経済委員会、ロシアNIS貿易会、カザフスタン側が産業・建設省、カザフスタン日本経済委員会、カザフスタン国家企業家会議所「アタメケン」、カザフスタン対外商工会議所だった。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(注)Joint Crediting Mechanismの略。途上国などへの優れた脱炭素技術などの普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収へのわが国の貢献を定量的に評価するとともに、日本の温室効果ガスの排出削減目標などの達成に活用する制度。

(小林圭子)

(カザフスタン、日本)

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