行政長官の施政報告、域外の企業・人材誘致や大湾区との連携を強調
(香港)
香港発
2023年11月08日
香港特別行政区政府(以下、香港政府)の李家超(ジョン・リー)行政長官は10月25日、就任後2回目となる施政報告(施政方針演説)を行った(2023年11月1日記事参照)。
報告では、主に「課題と好機」「『一国二制度の堅持』と国家安全の維持」「ガバナンスの向上」「成長のための推進力の創出」「日常生活における悩みや困難への対応」「調和と安定に向けた協働」「若者の成功」についての演説が行われた。
李行政長官は、「課題と好機」では、世界経済の見通し悪化が貿易や投資に影響を与え、高齢化の進行や人材不足が域内の課題と示し、最適な生活環境を保つよう、活気ある経済とともに結束力と思いやりのあるコミュニティー創造を目指すと述べた。
「『一国二制度』の堅持と国家安全の維持」では、同制度の原則は、中国憲法および香港基本法に定められた香港政府の憲法上の基礎と秩序を順守すると述べた。また、香港基本法第23条に基づく立法制定を2024年までに完了させるとした。
「ガバナンスの向上」では、73の新たな指標を含めた150の重要業績評価指数(KPI)を設定したと述べた。また、人工知能(AI)などを活用した政府サービスのデジタル化を推進するとした。
「成長のための推進力の創出」では、8分野(金融、イノベーションとテクノロジー(I&T)、文化・芸術、貿易、海運、航空、国際法・紛争解決、知的財産権取引)に重点を置いた香港域外企業誘致および人材誘致を行うと発表した(注1)。また、I&Tエコシステムの進展のため新産業(注2)の開発促進に向けた100億香港ドル(約1,900億円、1香港ドル=約19円)規模のファンドを設立すると表明した。加えて、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(大湾区)の関連当局とフィンテックやグリーンテックに関する協力を行うことを示した。
「日常生活における悩みや困難への対応」では、極小住宅の問題を解決するためのタスクフォースを設立するとした。また、住宅購入印紙税の税率を15%から7.5%に引き下げることを示した。
「調和と安定に向けた協働」では、少子化対策として、2万香港ドルの出産一時金の給付や、18歳未満の子供を持つ世帯住居の家賃控除または住宅ローン控除額の引き上げを示した。高齢化対策として、大湾区全体での高齢者支援や介護者の負担を軽減するための方針が示された。また、医療産業開発に向けた現行規制の見直しなどを行う。
「若者の成功」については、高等教育機関に在籍する生徒数に占める留学生の割合を40%に倍増、また、中国本土の当局と特定分野における資格の相互承認を強化することが示された。
施政報告の詳細は香港政府のウェブサイトにおいて確認できる。
(注1)トップタレントパススキームの適用範囲の拡大、資本投資者入境制度の再導入や誘致後の人材をサポートする事務所の設立と人材誘致とその後のフォローアップを行う。
(注2)マイクロエレクトロニクスの研究開発(R&D)、R&D研究所やスーパーコンピュータセンターの設立などが対象となる。
(松浦広子)
(香港)
ビジネス短信 5a48b5f8dc4a3b6a