IPEF首脳会合で重要鉱物対話の枠組み創設、米国はインフラ投資活性化を強調

(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)

ニューヨーク発

2023年11月21日

インド太平洋経済枠組み(IPEF)参加14カ国の首脳は11月16日、米国サンフランシスコで開催したIPEF首脳会合の結果を踏まえた共同声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。おおむね、IPEF閣僚会合の結果(2023年11月17日記事参照)を確認する内容となるが、新たな点として「IPEF重要鉱物対話」の創設で合意している。

「IPEF重要鉱物対話」は、参加国内の重要鉱物サプライチェーンの強化に向けた緊密な協力関係を醸成することが目的だ。参加国は既に、IPEFの2つ目の柱(注)であるサプライチェーン協定に署名しており、重要鉱物についてはさらに一段、力を入れた対応を図る。声明によると、今後も重要鉱物に限らず、エネルギー安全保障や技術などの分野で追加的なイニシアチブを探求するとしている。このほか、閣僚会合で合意された閣僚級のIPEF協議会の年次開催に加えて、首脳会合も隔年で定期開催することが盛り込まれた。4本柱のうち、唯一実質妥結に至らなかった貿易の柱については、強力で執行可能な労働基準を通じた労働者の権利の推進などを含む互恵的な成果に向けて交渉を続けていくとした。米国で貿易の柱の交渉を担当する通商代表部(USTR)はプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、貿易円滑化、包摂性、技術支援と経済協力、農業やその他の分野で進展があるとしている。

米国はインフラ投資の活性化を強調

バイデン政権は共同声明以外に、(1)今回の閣僚、首脳会合の成果を要約したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと、(2)グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)とIPEFによる投資家フォーラムに関するファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。PGIIは、2022年のG7サミットで立ち上げられた新興国でのインフラ支援枠組みで、民間セクターとの連携で気候変動対策やサプライチェーンの強靭(きょうじん)化に資する投資推進を目的とする。IPEFの狙いとも調和することから、連携が図られたものとみられる。ジーナ・レモンド商務長官が発表同日に同フォーラムを主催し、米国投資会社大手のKKRや資産運用大手ブラックロックなど投資関連企業の首脳陣と、官民連携の在り方や優先分野について協議を行っている。さらに、米国はこれに関連して、IPEF域内のインフラ投資計画におけるファイナンス面を調整する「PGII IPEF投資アクセラレーター」の立ち上げを宣言している。詳細は明かされていないが、米国貿易開発庁(USTDA)が関与して、投資案件を総合調整するワンストップ機関となることが想定されているとみられる。ジョー・バイデン大統領も首脳会合後の記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「アクセラレーターはクリーンエネルギーやハイテク分野の主要な投資案件に民間資本を呼び込む」と意義を強調している。今回の成果を踏まえて、IPEF域内で関連投資が活発化していくことが期待される。

(注)IPEFの交渉分野は、(1)貿易、(2)サプライチェーン、(3)クリーン経済、(4)公正な経済、の4本柱となっている。

(磯部真一)

(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)

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