10月の米雇用者数は15万人増、失業率3.9%に上昇、時給の伸び率はわずかに鈍化
(米国)
ニューヨーク発
2023年11月06日
米国労働省が11月3日に発表した10月の非農業部門雇用者数は前月から15万人増と、市場予想の18万人増を大幅に下回った。また、8月の数値が22万7,000人増から16万5,000人増に、9月の数値が33万6,000人増から29万7,000人増にそれぞれ下方改定された。
就業者数は前月から34万8,000人減少し、失業者数は14万6,000人増加した。失業者のうち、一時解雇の失業者は前月より9万2,000人増の87万3,000人、恒常的失業者は前月より16万4,000人増の160万5,000人だった。また、労働参加率は、生産年齢人口が前月から21万4,000人増の2億6,764万人、労働力人口が前月から20万人1,000人減の1億6,773万人となった結果、前月より0.1ポイント低下し62.7%だった。
以上の要因を踏まえた失業率は、前月から0.1ポイント上昇し3.9%となった(添付資料図1、表1参照)。フルタイム・パートタイムの別でみると、フルタイムの失業率は前月と変わらず3.7%、パートタイムは前月から0.3ポイント上昇し4.6%だった。
10月の雇用者数の前月差15万人増の内訳をみると、民間部門は9万9,000人増、うち財部門が1万1,000人減だった。主な業種としては建設業が2万3,000人増、製造業は全米自動車労働組合(UAW)によるストライキの影響を受けて自動車・自動車部品が減少(3万3,000人減)し、3万5,000人減だった。サービス部門は11万1,000人増、主な業種では、教育・医療サービス業が8万9,000人増、娯楽・接客業が1万9,000人増、対事業所サービスが1万5,000人増と増加した。一方、情報通信業が9,000人減、金融業が2,000人減、商業・運輸・倉庫業が運輸・倉庫業の減少(1万2,000人減)の影響により1,000人減だった。また、政府部門は5万1,000人増だった(添付資料図2、表2参照)。
平均時給は34.00ドル(前月33.93ドル)で、前月比0.2%増(前月0.3%増)、前年同月比4.1%増(前月4.3%増)と伸びは低下した。市場予想は前月比0.3%増、前年同月比4.0%増だった。前年同月比でみて伸びが高かった業種は、金融業(5.1%)、建設業(5.0%)、製造業(4.8%)などで、伸びが低かった業種は教育・医療サービス(3.0%)、情報通信業(1.4%)と、前月とほぼ同様の構成だった。
今回の雇用統計をみると、賃金の伸びはサービス業を中心に緩やかに低下傾向が続き、連邦準備制度理事会(FRB)が期待するとおり労働市場の緩和が続いているようだ。一方、新規雇用者数では、UAWのストライキの影響による製造業の減少が目立つが、それ以外にも娯楽・接客業や小売業など多くの業種で伸びが鈍化した。また失業率は、労働参加率が低下したにもかかわらず、上昇した。ただし、失業率上昇の主な要因は7月以降の雇用の伸びの中心となってきたパートタイム雇用者数の減少であり、これが単に季節性要因の剥落のみを意味するのか、労働市場が冷え込みつつある兆しを意味するのかは、今回の結果だけでは判別しがたい。ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は「統計は労働市場の減速を示唆している。われわれが待ち望んでいたことであり、助けられる」としつつも、「経済がバランスを取り戻しつつあることはさらなる安心感を与えてくれるが、1つの雇用統計に過剰反応したくはない」と述べている(ブルームバーグ11月3日)。FRBが政策金利の誘導目標を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)の次回開催(12月12~13日)までにはもう一度、雇用統計の公表が予定(12月8日)されており、市場が期待する政策金利の利上げが打ち止めとなるかどうかは今しばらく情勢を見守る必要がありそうだ。
(加藤翔一)
(米国)
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