2023年中期財政計画を発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2023年11月14日

南アフリカ共和国のイノック・ゴドングワナ財務相は11月1日、南ア議会で2023年中期財政計画に関する演説を行った。同年2月に行われた2023年度(2023年4月~2024年3月)予算案発表時よりも多くの財政指標が悪化すると見込まれており(2023年3月22日記事参照)、財政立て直しに向けて厳しい見通しとなった。前年のやや楽観的な見通しを事実上、修正した。

2023年の実質GDP成長率予測については、予算案発表時の予測から0.1ポイント引き下げて0.8%とした。ゴドングワナ財務相は演説で、停電や物流セクターの不振、高インフレ、さらには、南アにとって最大の貿易相手国の中国の成長見通しが弱含みなこと、一次産品価格が下落していることなど、南ア経済を取り巻く環境の厳しさを指摘した。2024~2026年の平均成長率予測も1.4%としたが、経済・財政状況の改善を望むレベルには不十分とした。

発表した中期財政計画では、2023年度の歳入は1兆9,155億ランド(約15兆5,156億円、1ランド=約8.1円)、歳出は2兆2,620億ランドとなった。特に鉱業部門からの法人税収入が大幅減少したことなどから、2023年度の税収見込みは568億ランド減少し、それに公的部門人件費の増加や、債務返済コストの増加なども加わり、財政赤字幅が拡大した。財政赤字のGDP比は前年度の3.7%から4.9%まで悪化した。次年度以降は4.6%(2024年度)、4.2%(2025年度)、3.6%(2026年度)と次第に緩和するものの、当初予算時からは遅れる見込みとなった。公的債務はGDP比70%を超えており、2025年度の77.7%をピークに減少するとされるが、2031年度時点でも70%を超える予想となっているなど、当面70%超の水準で推移が予想され、政府財政の持続可能性が懸念されている。また、税収入の減少による歳入不足拡大も予想されており、政府は今後3年間で平均5,530億ランドの借り入れを余儀なくされる。これにより、2026年までの負債総額は6兆5,000億ランドを超え、2024年度からの3年間で年間1兆3,000億ランドの利払いが発生することになる。こうした状況について、当地の民間エコノミストは南アの格付け引き下げリスクの高まりを指摘している。

政府は歳出削減の取り組みも進めるが、経済見通しの厳しさが中期財政見通しの悪化に大きな影響を与えているとの認識も強く、今回の「2023年中期財政計画」では、経済成長引き上げの措置を支援するとした。

具体的には、慢性的な電力不足が言われる中、再生可能エネルギーへの投資による発電能力の増強や、民間投資を呼び込むための電力セクター改革、物流システムの改革などを挙げた。しかし、財政余力が限られる中、国際金融機関や民間投資を誘発するための構造改革に向けた取り組みについて意思表明した側面が強く、具体策については年明け2024年度予算案の発表時まで先送りしたかたちだ。

当地の有力経済団体BLSA(ビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ)は今回の政府発表について、おおむね好意的な評価をしている。2024年に総選挙を控え、歳出圧力が強まる風潮の中で、財政健全化の方向を何とか堅持したことや、民間部門との対話・協力姿勢を示して経済構造改革に取り組むとしたことなどを前向きに捉えているようだ。他方で、当地の有力経済紙の中には、南ア経済の先行き不透明感が増す中で、インフレ対策の金融引き締めが続き、歳出抑制を図る政府の姿勢に懐疑的な論調も見られる。財政再建には経済成長が必要とされながら、ブレーキばかり踏んでいるという不満もあるようだ。

(的場真太郎)

(南アフリカ共和国)

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