ベルリンでフォーリング・ウォールズ・サイエンス・サミット開催

(ドイツ、日本)

ベルリン発

2023年11月15日

ドイツ・ベルリンで11月7~9日に「フォーリング・ウォールズ・サイエンス・サミット外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が開催された。同サミットは、科学分野の世界的な専門家や起業家が集まり、既存の壁を壊して社会にインパクトを与える世界中の研究を発表、表彰する国際フォーラム。1989年11月9日のベルリンの壁崩壊を記念して、ベルリンで毎年開催されている。

初日の7日には、学生や若手研究者、スタートアップによるピッチが行われた。

フォーリング・ウォールズ・ラボ(Falling Walls Lab)部門は、学生や若手研究者などが3分間で革新的なアイデアを発表するピッチコンテストだ。世界各地で開催された「インターナショナル・フォーリング・ウォールズ・ラボ」の受賞者、64カ国から100人がピッチを行った。グリーン水素の製造と貯蔵に関する技術、健康に有害な化学肥料の代替として人体や環境に無害なサボテン由来の肥料、大量廃棄物となっている鶏の羽毛を使ったオムツ、キノコの根を使ったプラスチック代替品などの研究が発表された。

日本からは、9月22日に仙台で開催された「フォーリング・ウォールズ・ラボ・仙台2023」の受賞者が登壇した。東北大学の博士課程大学院生のアオス・エマニュエル・イケチュク氏は、世界中で増え続ける高分子廃棄物という課題に対し、リサイクルや燃料化などの対応策についてピッチした。豊橋技術科学大学の博士課程大学院生のモハメド・アブド・エル・クドウス氏は、ガラス用ナノコーティングスプレーを紹介した。このスプレーは、車体やビルの窓ガラス、太陽光エネルギー発電のパネルにも利用でき、耐久性が高く、メンテナンスの時間とコストを節約でき、環境にも優しい特性があるとアピールした。

写真 フォーリング・ウォールズ・ラボに登壇した豊橋技術科学大学のモハメド・アブド・エル・クドウス氏(左)と東北大学のアオス・エマニュエル・イケチュク氏(ジェトロ撮影)

フォーリング・ウォールズ・ラボに登壇した豊橋技術科学大学のモハメド・アブド・エル・クドウス氏(左)と東北大学のアオス・エマニュエル・イケチュク氏(ジェトロ撮影)

写真 フォーリング・ウォールズ・ベンチャーズに登壇したキュナシスの楊天任CEO(ジェトロ撮影)

フォーリング・ウォールズ・ベンチャーズに登壇したキュナシスの楊天任CEO(ジェトロ撮影)

フォーリング・ウォールズ・ベンチャーズ(Falling Walls Ventures)部門では、研究の専門性と起業家としての卓越性を融合させたスタートアップがアイデアを競う。13カ国・地域から25のスタートアップが登壇。日本からはキュナシス(QunaSys外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、本社:東京都文京区)の楊天任・最高経営責任者(CEO)が登壇した。同社は素材、化学、製薬などの産業分野で、アルゴリズム・ソフトウエアを活用した量子コンピュータの実応用に向けたソフトウエア開発を行っている。同社の材料開発データ向けプラットフォームサービスは、必要な材料の計算や、研究開発にかかる時間が大幅に短縮できることをアピールした。

(小川いづみ、中村容子)

(ドイツ、日本)

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