中国・スリランカ首脳会談、「一帯一路」によるインフラ開発継続へ

(スリランカ、中国)

コロンボ発

2023年11月02日

中国の習近平国家主席とスリランカのラニル・ウィクラマシンハ大統領は10月20日、北京で首脳会談を実施した(2023年11月2日記事参照)。ウィクラマシンハ大統領は2022年7月に就任後、初の中国訪問となる。

両国の発表によると、両首脳は「コロンボ・ポートシティー・プロジェクト」(2023年6月22日記事参照)とスリランカ南部のハンバントタ港を「一帯一路」の重要プロジェクトと位置づけ、開発協力の推進を確認した。習国家主席は、スリランカの債務再編や経済安定化への支援とともに、スリランカから中国への輸入促進や同国への投資拡大を約束した。加えて、習国家主席は、スリランカに透明で開放的なビジネス環境の提供を求めた。

ウィクラマシンハ大統領は、中国による支援に謝意を伝えるとともに、「一帯一路」による海上交易路の開発がスリランカの経済・社会の発展につながることを認めた。さらに、中国、ミャンマー、スリランカ、南アフリカ共和国を結ぶ「海上経済回廊(maritime economic corridor)」を構築するという計画も明らかにした。

両国の共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの要点は次のとおり。

  • スリランカは、中国の「一つの中国(One China)」の原則を再確認し、中華人民共和国政府が中国全土を代表する唯一の合法的政府であり、台湾は中国の領土の不可分の一部であることを認める。
  • 中国は、自国の金融機関がスリランカと緊密に協議し、中国関連の債務処理について早期に合意するよう引き続き支援する。中国側は、スリランカの現在の困難に対処して債務負担を軽減し、持続可能な発展の実現を支援する上で積極的な役割を果たし続けるために、関係国や国際金融機関と協力する。
  • 双方向の貿易、経済協力を強化するため、包括的自由貿易協定(FTA)を可能な限り速やかに締結する。
  • 両国の中小企業間の交流、科学・教育分野の協力、両国の観光促進への協力。中国によるスリランカの農業生産能力向上への支援。
  • 両国による気候変動への適応と、持続可能な開発での緊密な協力。防災・減災、海難救助・救援・調査、海洋分野での人材育成を含む連携強化。
  • 両国による多国間主義の堅持、国際関係の民主主義の促進、より公正で衡平なグローバルガバナンス実現への合意。多国間貿易システムへの支持、保護主義への反対、経済のグローバル化をより開放的、包摂的、均衡的かつ万人にとって有益なものとすること。

スリランカ政府の発表によると、ウィクラマシンハ大統領は、中国訪問中に第3回「『一帯一路』国際協力ハイレベル・フォーラム」に出席したほか、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領、ベトナムのボー・バン・トゥオン国家主席、パキスタンのアンワールル・ハック・カーカル暫定首相、中国の丁薛祥副首相らと会談した。また、ポートシティー開発事業に出資する中国交通建設(CCCC)、スリランカでガソリンスタンドを運営する中国石油化工(Sinopec)、電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)、華為技術(ファーウェイ)とも面談し、スリランカの鉄道の電化やEVの組立工場、教育現場のデジタル化などについて議論した。

(大井裕貴)

(スリランカ、中国)

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