カナダ政府、「秋の経済声明」で住宅供給対策など発表

(カナダ)

トロント発

2023年11月29日

カナダのクリスティア・フリーランド副首相兼財務相は11月21日、財政支出計画や経済見通しなどを示した「2023年秋の経済声明」を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。住宅供給と物価安定を2つの重要課題として挙げ、「インフレの火に油を注ぐようなことは避けるという意識的な決定」の下、「責任ある財政計画」で対応することを明らかにした。

声明本文は4章で構成され、第1章「カナダの住宅アクションプラン」では、2028年度(2028年4月~2029年3月)までに45億6,500万カナダ・ドル(約4,976億円、Cドル、1Cドル=約109円)を投じる賃貸住宅建設への物品サービス税(GST)の撤廃や、住宅基金制度への10億Cドル追加投入による7,000戸以上の住宅建設支援、賃貸アパート建設融資制度への融資増額による10万1,000戸以上の住宅建設支援などを提示した。

第2章「強固な中間層の支援」では、競争法や競争審判所法の改正によるカナダでの競争強化で価格低下を促すなどの方針を表明。第3章「全てのカナダ人のために機能する経済の構築」では、脱炭素事業への投資税額控除の交付スケジュールを示すとともに、バッテリー生産を含むクリーン経済産業支援として、2028年度までに84億7,200万Cドルを充当するなどの方針を示した。第4章「効果的な行政、公正な税制、安定した金融セクター」では、2028年度までに政府支出を24億1,900万Cドル削減し、新型コロナウイルス禍以前の支出軌道に近づけることを約束した。

カナダ経済の見通しについては、2023年の実質GDP成長率1.1%を経て、2024年は0.4%へ鈍化、2025年は2.2%への回復を見込む(添付資料表1参照)。財政赤字は、2023年度は400億Cドルを見込んでおり、前年度(353億Cドル)から拡大して対GDP比で1.4%となる見通し(添付資料表2参照)だが、2026年度以降は対GDP比で1%未満に抑える目標を明らかにした。

声明を受け、カナダ商工会議所(CCC)のマシュー・ホームズ政策・政府関係担当上級副会頭は同日、「脱炭素化事業への投資税額控除に関する政府の交付スケジュールの意図に拍手を送るが、既に時間は失われている。炭素回収・利用・貯留(CCUS)事業は進行する必要があり、政府は2021年に初めて発表した計画や、その後の予算や声明で発表した計画を実現する必要がある。グリーンな経済成長を促進し、ネットゼロの野望を達成し、カナダ国民が必要とするサービスや社会制度の財源となる民間投資を促進するため、企業は政府と協力してこれらの事業に共同投資することが急務だ」とコメントした(CCCプレスリリース11月21日)。

(飯田洋子)

(カナダ)

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