2021年の米国年末商戦の小売売上高、過去最高の8,867億ドル、物価上昇も影響
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月20日
全米小売業協会(NRF)は1月14日、2021年の年末商戦期間(11~12月)の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)が前年同期比14.1%増の8,867億ドルだったと発表した。商務省が同日発表した小売売上高(季節調整値、前月比)は2021年11月に0.2%増、12月に1.9%減と軟調だったが(2022年1月18日記事参照)、前年同期比で見ると、堅調だったと確認できる結果となった。
NRFの会長兼最高経営責任者(CEO)のマシュー・シェイ氏は「消費者は賃金の増加や記録的な貯蓄に支えられ、(2021年は)例年よりも早い時期から買い物活動を開始できた」と説明した。また、これが11月から12月にかけて前月比の小売売上高が減少した理由の一部としつつも、「2021年は売上高にとって傑出した年だった」とコメントした。
NRFは2021年の年末商戦期間の小売売上高について、10月時点で前年同期比8.5~10.5%増(2021年10月29日記事参照)と予想し、12月には上方修正して11.5%増と見込んでいたが、それらを上回る結果となった。また、これまでの支出額、対前年比伸び率の最高値は2020年に記録した7,773億ドル、8.2%だったが、2021年はともに上回り、過去最高を記録した。
NRFチーフエコノミストのジャック・クラインヘンズ氏は「2021年の年末商戦の消費は、経済を牽引している消費者の継続的な需要を反映したもので、2022年も継続するとみられる」と述べた。一方で、新型コロナウイルスの収束がまだ見込めない中、「パンデミックがもたらす大きな不確実性により、今後数カ月は困難に直面することを覚悟しなければならない」とも警告した。
業種別にみると、ネット販売を含む無店舗小売りが前年同期比11.3%増の2,189億ドルと引き続き好調で、事前予測の2,183億~2,262億ドル(同11.0~15.0%増)とほぼ一致した。ただ、米国ソフトウエア大手アドビシステムズによると、年末商戦の消費額の増加は物価上昇による影響が一部影響しているという。実際、12月の米国ネット通販商品の価格は対前年同期比で平均3.1%上昇し、20カ月連続で上昇を記録した。また、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大に加え、サプライチェーンの混乱による商品不足や配送遅延などにより、11月1日から12月31日までのホリデー期間中に小売店のウェブサイトに掲載された在庫切れのメッセージは60億件以上に上った。これは2020年同期と比較して10%増で、新型コロナ感染拡大前の2019年同期と比べると253%増となっている(「CNBC」1月12日)。
小売業者は輸送費から人件費に至るまであらゆる面で困難に直面しており、2021年のホリデーシーズンは例年ほど大幅な値引きが行われなかった。いまだ収束しない新型コロナウイルスが2022年の個人消費にどのように影響を与えるか注目される。
(樫葉さくら)
(米国)
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