マレーシア政府、初の水素ロードマップを発表

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年10月10日

マレーシア科学技術・イノベーション省(MOSTI)は10月5日、政府初の「水素経済・技術ロードマップ(HETR)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。HETRは、国家エネルギー政策(2022年9月27日記事参照)に沿って策定されたもので、「ガバナンス、制度枠組み、監督体制の強化」「環境整備と経済的支援」「技術の商業化促進による輸出開拓と国内利用拡大」「生産能力の開発と向上」「啓発活動」の5つの戦略で構成される。

水素は、先に経済省が発行した「エネルギー移行ロードマップ(NETR)」でも重要6分野の1つに定められている(2023年9月4日記事参照)。NETR第2弾では、再生可能エネルギー(以下、再エネ)で生成される「グリーン水素」の生産能力を年間250万トンまで高める一方、化石燃料由来の「グレー水素」を全廃することを目指している。HETRはこの目標を達成すべく、マレーシアにおける豊富な天然ガスや成熟したインフラを強みに、二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)により収益化した「ブルー水素」を活用することで、現状では供給源が限られるグリーン水素を補う方針を示している。HETRの導入とNETRの実施により、マレーシアを、エネルギー移行と再エネ分野の先進国としたい考えだ。

サラワク州のグリーン水素ハブとしての確立など、NETRで指定された基幹プロジェクトを通じて、水素分野で2030年までに最大121億リンギ(約3,750億円、1リンギ=約31円)の収益を生み出し、490億~610億リンギのGDP押し上げ効果をもたらす、と政府は推計している。また、水素経済の実現により、温室効果ガスの排出量は2030年までに0.4~1.3%、2050年までに6~15%削減される見込みだ。

チャン・リーカン科学技術・イノベーション相は「水素経済はマレーシアの脱炭素目標の達成のみならず、マレーシア経済の成長にも寄与する可能性を秘めている」「企業国籍を問わず、水素生産に関してあらゆる業界関係者と連携したい」とし、特に水素自動車の普及や、マレー半島部での水素ステーション設置にも意欲を示している。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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