中国企業、コンゴ民主共和国南部の鉱山地域で水力発電所を建設

(コンゴ民主共和国、中国)

アビジャン発

2023年10月19日

中国企業が投資・建設を行った、コンゴ民主共和国(DRC)のブサンガ水力発電所の開所式が10月5日に行われ、DRCのフェリックス・チセケディ大統領立ち会いのもと、発電が正式に開始された。

ブサンガ水力発電所は、ルアラバ州のコルウェジから65キロ離れたDRC南東部に位置する。同州を含む旧カタンガ州地域(注)では、鉱山運営に大量の電力を消費する鉱山が多く、他地域と比べて電力需要の増加率が著しい。DRCに進出する中国企業は、主に同地域のルアラバ州や上カタンガ州、西部の首都キンシャサに集中している。

同発電所は、旧カタンガ州地域で60年以上ぶりとなる大規模インフラプロジェクトだ。中鉄資源集団と中国電建集団海外投資が共同で出資し、建設を手掛けた。設計から建設、検収に至るまで中国の基準を採用している。貯水量は13億立方メートル、発電設備容量は240メガワット、ダムの高さは141.5メートルと世界最大規模だ。発電機4基がすべて稼働すれば、年間平均発電量は13億2,000万キロワット(kW)に達し、同国における総電力の約10分の1を占める。総投資額は6億5,600万ドルに上る。

この投資計画は2016年に調印されたもので、2021年の中国商務部の発表によると、同発電所で生産される電力は、中国企業とDRC政府によって共同設立された鉱物採掘企業シノ・コンゴレーズ・デ・ミヌ(SICOMINES外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で主に利用されるとのことだ。

DRCは中部アフリカ地域で最大の国土面積を有し、熱帯雨林や天然資源に恵まれ、潜在的な水力発電能力は100ギガワット(GW)以上と推定される。同国の発電設備容量のうち、水力発電は98.8%を占める。しかし、国連開発計画(UNDP)によると、2021年の同国の人間開発指標(HDI)は191カ国中179位と開発が遅れており、その要因の1つが電化率の低さだ。同国では1,000万世帯のうち160万世帯しか電力にアクセスできず、世界で3番目に電化が遅れている。コンゴ川下流のインガダムは同国の全体発電容量の68%を賄う主要電源となっているが、発電所の老朽化や整備不良などにより供給力が低下している。

中国の国務院国有資産監督管理委員会は「ブサンガ水力発電所は、ルアラバ州の鉱業運営に必要な電力を確保し、生産能力を大幅に拡大できるほか、余剰電力を民間に回すことで、同地域の生活水準の向上にも期待できる。今後、地元産業や経済の発展を後押しする推進力となるだろう」と、DRCの経済開発への貢献に期待を示した。

(注)カタンガ州は、2015年にタンガニーカ州、上ロマミ州、ルアラバ州、上カタンガ州の4つの州に分割され、現在に至る。

(藤本海香子)

(コンゴ民主共和国、中国)

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