欧州環境庁、再エネ拡大のため柔軟性確保へ加盟国の協力強化求める

(EU)

ブリュッセル発

2023年10月27日

欧州環境庁(EEA)は10月20日、同じくEU機関であるエネルギー規制当局間協力庁(ACER)と共同で作成した報告書(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの拡大には、電力の需給調整を行う「柔軟性」を倍増させる必要性があるとした。同報告書では、EU加盟国間の協力を通じて柔軟性を引き出し、エネルギー安全保障を強化しながら、長期的な気候中立に貢献できる方法を示した。具体的な取り組みは次のとおり。

  • 柔軟性の確保には電力の相互接続の強化がカギとなる。国境付近の送電網を増やすことで、既存の送電網に効率的に接続することが可能となる。既存や計画中の国境付近の相互接続による電力需要の削減量は、2030年にはスウェーデンの電力消費量(2022年)に相当する規模となる。
  • 電力の需要対応(デマンドレスポンス)と省エネの併用は、エネルギー価格の低減だけではなく、柔軟性の確保が可能となる。これらの改善により、風力と太陽光由来を除く電力需要の削減量は、2030年にはスペインの電力消費量(2022年)に相当する規模となる。
  • 価格シグナルを通じ、企業投資の呼び込みや適切な消費行動を促す。消費者が適切な情報に基づいた消費者行動を取ることができるよう、信頼できる情報を提供する必要がある。
  • 各国で柔軟性のニーズを適切に評価し、国内とEU全体で補完的な評価を行う。
  • 国境を越えた共通政策を促進するため、加盟国の国家エネルギー・気候計画に柔軟性に関する地域協力の事例を含める。また、加盟国の温室効果ガス(GHG)排出予測により詳細なエネルギーデータを含める。

欧州委員会の共同研究センター(JRC)は6月に、2030年と2050年に必要な柔軟性を算出し、その確保に貢献する電力貯蔵技術を示している(2023年7月11日付記事参照)。

(大中登紀子)

(EU)

ビジネス短信 c01a476d6c21d6be