ADB、太平洋島しょ国の経済成長率の見通しを0.2ポイント引き上げ

(オセアニア)

調査部アジア大洋州課

2023年10月16日

アジア開発銀行(ADB)は9月20日、「2023年アジア経済見通し(9月版)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。ADBは太平洋島しょ国全体(13カ国、注)の2023年実質GDP成長率を前年比3.5%と予測、2023年4月予測の3.3%から0.2ポイント引き上げた。ADBは、引き上げた理由を「観光業の顕著な回復と景気刺激となる公共などインフラ事業が予想より速いペースで進んでいるため」とした。上方修正された国は13カ国のうち、フィジーをはじめとする6カ国で、反対に下方修正された国は2カ国となった。残る5カ国については、4月時点の予測値を維持した(添付資料表1参照)。

国別にみると、経済見通しが上方修正された国は、クック諸島が前年比14.5%(4月予測から3.3ポイント増)と最も上方修正幅が大きく、そのほか、フィジーが8.3%(2.0ポイント増)、サモアが6.0%(1.2ポイント増)、マーシャル諸島が2.2%(0.7ポイント増)、ツバルが3.0%(0.5ポイント増)だった。フィジーは、主要国からの観光客が新型コロナウイルス禍前の2019年の水準を月次ベースで上回るなど観光業が好調だったことに加えて、タロイモやスパイスなど農産物輸出も好調だったことが大幅な上方修正の理由と説明した。

一方、下方修正した国のうち、太平洋島しょ国全体のGDPの約3分の2を占めるパプアニューギニアは前年比2.0%(0.4ポイント減)だった。下方修正の理由について、鉱物・液化天然ガス以外の生産が予想より伸びなかったことや、外貨調達不足や電力・水の供給難が影響したとした。

なお、ADBは観光業回復の影響は今後も続くと予想し、2024年の同地域の実質GDP成長率を4月の2.8%から0.1ポイント上げ、2.9%に上方修正した。

2023年インフレ率は引き下げ

ADBは太平洋島しょ国全体の2023年インフレ率見通しについて、4月時点の予測値から0.1ポイント引き下げ、前年比4.9%とした(添付資料表2参照)。13カ国のうち唯一、予測値を引き下げたフィジーは、2023年7月までの12カ月間で、燃料価格の下落により光熱費が4.6%、輸送費が9.9%値下がりした。一方、インフレ予測を引き上げた国(9カ国)については、ロシアのウクライナ侵攻による食料品・燃料など世界的物価高騰や、自然災害により農業・漁業が影響を受けたためとしている。例えば、2023年3月にサイクロンに見舞われたバヌアツは4.0%から9.0%(5.0ポイント増)、干ばつの影響を受けたツバルは3.3%から6.2%(2.9ポイント増)と大幅に引き上げた。また、クック諸島とトンガは今回の修正でインフレ率が10%を超える予測となった。なお、2024年の島しょ国全体のインフレ率は4月の4.4%予想から4.5%に引き上げている。

(注)ADBは太平洋島しょ国として14カ国を挙げているが、ニウエについては予測値を公表していないため13カ国とした。

(小山千紗子)

(オセアニア)

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