2023年世界貿易は第二次大戦後最低の水準、UNCTAD報告書

(世界)

調査部国際経済課

2023年10月13日

国連貿易開発会議(UNCTAD)は104日に発表した「貿易開発報告書2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、2023年の世界の物品・サービス貿易の成長率が約1%にとどまるとの見通しを示した。これは、同年の世界経済成長率(2023年10月10日記事参照)を下回り、かつ、第二次世界大戦以降で最も低い水準となった。UNCTADは、短期的には見通しをさらに下回る可能性がある一方で、中期的には新型コロナウイルス感染拡大前の傾向に落ち着く見通しとした。今後の下振れリスクとして、主要国間の貿易摩擦の長期化、世界需要の減退、地政学的不確実性の増大などを挙げた。貿易摩擦や地政学的不確実性の具体例として、貿易を巡る米中間の覇権争い、輸出管理規制の増加、脱炭素化を目的とする先進国による補助金やそのほかの貿易関連措置の導入を指摘した。

UNCTADは世界貿易の減速要因について、特に物品貿易の伸びが2023年を通じてマイナス圏にとどまっていることを挙げた。2023年第2四半期(46月)と第3四半期(79月)の予測では、商品在庫サイクルの正常化や、中国の新型コロナ関連規制の緩和に伴う大幅な回復を期待する向きもあったが、ロックダウン後の反動が弱まり、見通しに対する期待が悪化したことなどを指摘した。サービス貿易については、その主要な構成要素の輸送と旅行の伸びを背景に、回復が見られるとした。

報告書では、「主要な貿易相手国の間に、現在の世界貿易の難題を乗り切るための政策的意思があるかは不透明」としつつ、政策立案者に対し「変化する国際貿易システムの断層に対処するため、大胆で革新的かつ協力的なアプローチが必要」と指摘した。また「先進国で取られている新しい産業政策が既存のサプライチェーンを縮減させる可能性を考慮すると、途上国は輸出市場を多様化するための新たな販路開拓に取り組む必要がある」とし、そのアプローチとして、地域内貿易や途上国間貿易の開拓に大きな可能性があるとの見解を示した。

(大滝泰史)

(世界)

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