1兆元の特別国債発行、災害復旧や水害防止などに使用

(中国)

北京発

2023年10月31日

中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は10月24日、1兆元(約20兆5,000億円、1元=約20.5円)の特別国債発行(注)を決議した。2023年第4四半期(10~12月)に発行し、資金は2023年、2024年に分けてそれぞれ5,000億元を災害復旧や水害防止など防災関連プロジェクトに使用する。資金は全て移転支出により地方に配賦される。今回の特別国債発行により、財政赤字は3兆8,800億元から4兆8,800億元に増加し、赤字比率は3%から3.8%に上昇する。

国務院による10月25日の記者会見で、国家発展改革委員会の張世昕秘書長は、今回の発行は8月17日の中国共産党中央政治局常務委員会会議で災害復旧や防災能力の向上が求められたことによるとした。また、適切な用途への使用を促すため、資金はプロジェクトごとに管理するとした。

同委員会固定資産投資司の羅国三司長は、資金は必要性が高く、投資効果の明らかなプロジェクトに使用するとし、一般的な産業プロジェクトやイメージ・業績向上のためのプロジェクトへの使用は断固として避けるとした。

財政部の朱忠明副部長は発行により「赤字比率は小幅に上昇するものの、政府の負債比率は合理的範囲にあり、全体としてのリスクはコントロール可能だ」とした。また、発行の目的はあくまでも災害復旧や水害防止とし、景気への影響については「客観的には国内需要を押し上げる効果がある」と述べるにとどめた。

中国財政科学研究院の石英華研究員は、資金が年をまたいで使用されることは政策の連続性を表し、長期・短期の両方を見据えたものとした。その上で、災害復旧・防災への支出は「質の高い発展の促進に役立つ」とした(「新華網」10月24日)。

国泰君安証券は10月24日付のレポートで、今回の特別国債発行はGDPを0.4~0.8ポイント押し上げるとしている。

(注)中国で特別国債はこれまで1998年、2007年、2017年、2020年(2020年6月23日記事参照)に発行されている。うち2017年は2007年発行分の償還のために発行された。

(河野円洋)

(中国)

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