モスクワで金融フォーラムが開催、防衛力の整備や産業基盤の発展を目指す

(ロシア)

調査部欧州課

2023年10月11日

モスクワで9月28日にモスクワ金融フォーラムが開催された。ロシアの金融・経済をテーマにしたセッションでは、政府および中央銀行や民間銀行の幹部が金融・財政政策、経済・貿易の見通しについて議論した。

ミハイル・ミシュスチン首相は金融フォーラムの全体会合の冒頭で、これまでロシア政府や中銀が講じた企業支援策・経済対策により、ロシア経済の回復は予想を上回るペースで進んでいると述べた。GDP成長率の見通しについては、投資、消費活動、生産設備の拡大が主な原動力となり、2023年は2.5%超、今後3年間は2%を超える水準になるとの見方を示した。

アントン・シルアノフ財務相は連邦予算について、2023年は約33兆ルーブル(約49兆5,000億円、1ルーブル=約1.5円)、2024年は36兆6,000億ルーブルに増えると発表した。予算には、国防費、社会保障費、工作機械や航空産業などのハイテク技術への設備投資が含まれると説明した。計画された歳出は予算で対応できると述べ、財政赤字を補填(ほてん)することができる政府系基金(国民福祉基金)には触れなかった(2023年5月31日記事参照)。

ロシア中央銀行のエリビラ・ナビウリナ総裁は政策金利について、財政支出が増えれば追加の引き上げをする可能性がある、と指摘した。また、インフレ目標の変更はなく、将来の物価上昇率は目標の4%に近づくと見方を述べた。

マクシム・レシェトニコフ経済発展相は、諸外国の政策に影響されないためにも、技術開発や輸入代替政策を進めていくことが重要だと強調した。モスクワ市のセルゲイ・ソビャニン市長も、他国の技術に依存することは危険で、ロシアは重要産業の技術開発や生産設備に投資をする必要がある、と指摘した。特に自動車産業、宇宙開発、無人航空機システム、マイクロエレクトロニクスなどの重要産業の発展に注力する必要があると見方を述べた。

モスクワ金融フォーラムは2016年から開催され、ロシア経済や財政に最も影響がある問題について議論される。今回で8年連続の開催となった。

(小野塚信)

(ロシア)

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