パックスズキ、パキスタン証券取引所の上場廃止を決定

(パキスタン、日本)

カラチ発

2023年10月26日

スズキが73.09%の株を所有するパキスタン生産販売現地法人のパックスズキモーター(PSMC)は10月19日の取締役会で、残りの全株式をスズキが買い戻し、パキスタン証券取引所(PSX)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上場を廃止することを決議し、PSXで同日発表した。PSMCは上場廃止の理由として、(1)2019年、2020年、2022年が赤字となり、2023年も第3四半期(7~9月)まで赤字となっていることや、(2)2021年を除き、2019年から株主に配当ができていないこと、(3)現在の株価が低いレベルにあり、日々の株式売買も限定的なことを挙げた。

現在、パキスタンの自動車産業は危機的な状況に陥っている。乗用車販売台数を見ると、2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)は新型コロナウイルス禍後の好景気や継続した低金利を背景に、23万4,180台(前年度比54.9%増)と史上最高を記録した。しかし、同時に原油価格高騰などによる輸入増大によって貿易赤字が急拡大。郷里送金収入が貿易赤字を埋めきれず、経常赤字も悪化した。2022年には中央銀行(SBP)の外貨準備高が急激に低下PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、SBPは輸入抑制のために送金規制を強化した(現在は廃止、2023年6月29日記事参照)。この規制により、PSMC、インダス・モーター(IMC、トヨタの現地合弁企業)、ホンダアトラスカーズ(HACPL)を含む自動車メーカー各社は前年輸入実績の50%程度しか完全現地組み立て部品(CKD)を輸入できなくなった。加えて、コンテナが通関できずに港に滞留する事態も頻繁に発生し、各メーカーはしばしば生産休止に追い込まれた。この影響で、2022/2023年度の販売台数は96,811台と、前年度から一転して、58.6%の大幅減となった。2023/2024年度第1四半期(7~9月)の販売台数は16,021台と、前年同期比43.9%減、ピーク時の約4分の1レベルにまで落ち込んでいる。

製造ライセンス・IQ更新されず

さらに、「2021-2026年自動車産業開発輸出政策(AIDEP 2021-26)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、自動車メーカーに課された輸出ノルマ(2022/2023年度は輸入額の2%)を各メーカーが達成できなかったため、製造ライセンスが有効期限の9月末までに更新されず、輸入割当(IQ)もなされていない。これにより、日系3社は10月以降、CKDを輸入できない状態が続いている。各社は生産休止を発表しており、PSMC(休止期間:10月25~11月3日)、IMC(同:10月17日~11月17日)、HACPL(同:10月24日~10月31日)ともに、深刻な事態に直面している。現在、パキスタン自動車工業会(PAMA)、日本大使館、ジェトロなどが生産ライセンスとIQの更新を産業生産省や関係省庁へ働きかけている。

(山口和紀)

(パキスタン、日本)

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