パキスタン中銀、輸入規制を全廃

(パキスタン)

カラチ発

2023年06月29日

パキスタン中央銀行(SBP)は6月23日、輸入に関して銀行が準拠すべき基準を示した2022年12月27日付通知(EPD Circular Letter No. 20外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を廃止(2023年1月4日記事参照)、即時発効した。輸入キャッシュマージン(預託金)規制廃止(2023年3月31日。2023年1月10日記事参照)に続くもので、これにより輸入を抑制するためのSBPの規制は全廃された。

12月27日付通知では、SBPによる輸入事前許可制度を廃止する一方で、外国為替認定銀行(Authorized Dealers)が、必須品(食料、医薬品など)、エネルギー、輸出産業用原材料、農業投入財などの企業の輸入を自行判断で許可できるとした。しかし、優先品目に自動車の完全現地組み立て部品(CKD)は含まれなかったため、日系を含む自動車メーカー各社は適正な部品在庫水準を維持できず、1月以降たびたび生産停止に追い込まれていた。

SBPの規制撤廃の動きについて、カラチの日系企業幹部は「規制は撤廃されたものの、外貨準備高が危機的な状況にあることに変わりはなく、各市中銀行が信用状(L/C)開設等の運用をどのように変えるかは定かではない」と慎重な見方を崩さない(6月27日)。

SBPの外貨準備高は35億3,600万ドル(6月16日時点)と輸入1カ月分にも満たないレベルに低下しているにもかかわらず、SBPが輸入関連規制を撤廃するのは、IMFの輸入正常化要求に対応したためだ(DAWN紙6月26日)。政府は、6月に最終期限を迎えるIMFの拡大信用供与(EFF)第9次レビューの合意、理事会承認を急いでいる。承認されれば、未実行融資25億ドルのうちの12億ドルが融資される見通しだ。シャバズ・シャリフ首相は6月22日、フランス・パリでクリスタリナ・ゲオルギエバIMF専務理事と会談し、その後、事務レベルでオンライン協議を続けた。そして政府は6月25日、IMFが要求していた税収増、歳出削減などの修正案を異例な速さで盛り込み、7月に始まる新年度の連邦予算案は議会で可決された。さらにSBPは6月26日、緊急の金融政策委員会を開催し、IMFのインフレ対策要求に応じて21%から22%への利上げに踏み切った。

6月27日から7月6日に予定されているIMF理事会の議題に、6月27日時点でパキスタンは含まれていない。今後、理事会の議題にパキスタンが取り上げられ、融資が承認されるかが注目される。

(山口和紀)

(パキスタン)

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