香港金融管理局総裁、香港ドルの対ドル・ペッグ制を「変更の必要なし」と強調

(香港)

香港発

2023年10月25日

香港金融管理局(HKMA)の余偉文総裁は10月17日、香港ドルの対米国ドル・ペッグ制(以下、ペッグ制)が同日で40周年を迎えたことについて、HKMA公式ブログ「インサイト」に文章を寄稿した。余総裁は公式ブログの中で、「ペッグ制は優れた制度で、香港の通貨と金融安定の礎だ。1983年10月の導入以来、経済と地域社会の継続的な発展に必要な安定した金融環境を提供してきた」と指摘した。

HKMAは2005年5月に、1米ドル=7.75~7.85香港ドルの交換範囲を設定、この目標範囲内に為替レートが収まるよう為替介入を実施してきた。2005年の同措置導入以降、HKMAは、香港ドル高の局面では計321回、1兆4,500億香港ドル(約27兆5,500億円、1香港ドル=約19円)相当の香港ドル売り・米ドル買い介入を実施した。一方、香港ドル安の局面では計84回、4,200億香港ドル相当の香港ドル買い・米ドル売り介入を実施した。

余総裁は続けて、香港の金利について次のように言及している。香港の金利は、ペッグ制により米ドルの金利に連動するため、米ドルの金利上昇に伴い香港の金利も上昇する。高金利の環境下では借り入れコストが上昇するため、香港経済がいまだ完全に回復できていない中で、企業や住宅ローンを抱える家庭は困難に直面している。注目すべきは、他の経済圏や金融センターなどといった固定為替レート制を採用していない国においても、高金利の痛みを感じていることだ。このことからも、ペッグ制が最も重要な要因とはいえない。

余総裁は、今後の香港におけるペッグ制の在り方について「金融市場における変化は絶え間なく、HKMAは物事を把握し変化を受け入れる準備を常にしておく必要がある。しかし、物事を注意深く検討し、優れたシステムを維持することの価値も念頭に置くべきだ」とし、「香港がペッグ制を変更する意向はなく、変更する必要性もない」と強調した。

米国金融大手のモルガン・スタンレーや世界銀行でエコノミストとしての勤務経験がある独立系エコノミストのアンディ・シエ氏は、香港経済が米国の金融政策に連動せざるを得ない状況を考慮して、「中国のインフレ率低下により、金利は米国の金利より低い水準にとどまると予想されている。(香港ドルのペッグ先として)人民元を採用すれば香港の資産市場は安定するだろう」との見方を示した(「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙10月17日)。

(松浦広子)

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