AIの音楽データ使用にオプトアウト権を行使

(フランス)

パリ発

2023年10月20日

フランスの音楽の著作権管理団体SACEM(作家・作曲家・出版社協会)は10月12日、「人工知能(AI)ツールから音楽データの使用を除外する権利(オプトアウト権)を行使する」と発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今後、同団体が管理する著作物を使用してAI学習用データを構築し、データマイニング(注1)を実施する場合、同団体と事前に利用条件を交渉し承認を得ることが必要となる。

既存の音楽データをベースに学習した生成AIツールが増大する中、SACEMは著作権保護の観点から、作家、作曲家、音楽出版社に対する公正な報酬を確保することを目的とし、知的財産法典のL122-5-3条により認められているデータマイニングのオプトアウト権を行使することを決定した。

1851年に設立されたSACEMは、約21万人の会員の国内外における著作権の使用料を徴収、分配している。同協会は、AIは音楽のクリエーターに新しい創作ツールとして素晴らしい機会を与えてくれるものだとした上で、AIを禁止し、発展を妨げる意図はなく、オプトアウト権により、音楽クリエーターや出版社とAI開発者の間に、持続可能で高潔、透明なバランスを求めるものだとした。

10月13日付「レゼコー」紙WEB版によると、SACEMのダビッド・エル・サエグ副会長は「SACEMのレパートリーの作品を提供するストリーミングサービス事業者は、まずストリーミングの利用規約やメタデータ(注2)にオプトアウトを盛り込み、AIロボットがデータマイニングのためにアクセスできないようにする必要がある。その後、SACEMは、作品を使用するストリーミングサービス事業者と権利者の報酬について交渉する」と述べた。

また同協会は、EUに対しても、生成AIの情報源について透明性の確保を求めている。現在EUで審議が進められているAI規制枠組み規則案(2021年4月23日記事参照)によると、生成AIツールの開発に著作権のあるデータが使用されている場合は開示を義務付けるとしている。

(注1)大量データをAIにより自動分析し、価値のある知見を得ること。

(注2)音源に関する曲、アルバム、アーティスト、ジャンルなどの情報。

(奥山直子)

(フランス)

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