米ミズーリ州セミナー、知事が豊富な人材と物流面での投資優位性を強調

(米国、日本)

調査部米州課

2023年10月13日

ジェトロは1011日、米国ミズーリ州のビジネス・投資環境を紹介するセミナーを東京で開催した(注1)。ミズーリ州のマイク・パーソン知事、ジェトロの石黒憲彦理事長が登壇したほか、米国でのビジネス展開に関心を持つ製造業を中心とした日本企業などから約60人が参加した。

開会あいさつで石黒理事長は、これまで多くの日本企業が製造拠点としてミズーリ州に進出し、長きにわたりビジネスを拡大してきたとして、日本との関係の強さを説明した。また同州は、産学官のパートナーシップを活用しながら、インフラ整備や人材開発など先進的な取り組みを進めている、と州の特徴について述べた。米国進出においては、州知事を始めとする州政府、各地の経済開発公社と連携することが重要とも説明した(注2)。

写真 ジェトロの石黒理事長(ジェトロ撮影)

ジェトロの石黒理事長(ジェトロ撮影)

基調講演を行ったパーソン知事は「州知事になって5年、これまで労働力とインフラの開発に取り組んできた」と述べ、ミズーリ州のビジネス・投資環境の優位性に、優秀な人材の豊富さと、発達した物流システムを挙げた。人材面では、州内の企業と連携し、高校教育に企業のビジネスを学ぶカリキュラムを取り入れていると述べた。物流面では、米国初となるカナダからメキシコまで直結する鉄道プロジェクトが同州を通る上、「米国の地図の中心に指を置くと、そこにミズーリ州があるだろう。全米へのアクセスが良い」と強調した。これらに加え、「操業に必要なコストが全米で最も低い州だ」とも述べ、ミズーリ州への投資の魅力を語った。

写真 ミズーリ州のパーソン知事(ジェトロ撮影)

ミズーリ州のパーソン知事(ジェトロ撮影)

同州の投資誘致機関であるミズーリ・パートナーシップのスバシュ・エイリアス最高経営責任者(CEO)は、同州の低い法人税に加え、多数の税制上の優遇措置を有しているなど、特に製造業などが投資するにあたっての優位性を紹介した。その他、同州に所在する、植物・農業バイオ分野において世界最大の独立系研究機関であるドナルド・ダンフォース植物科学研究所を紹介し、同州最大の産業である農業の魅力もアピールした。

仕事に対する価値観が日本人に近い

セミナーでは、同州に拠点を有する日系企業による講演も行われた。カワサキモータースの汎用エンジンディビジョン・ディビジョン長の住友幸和氏は「米国中西部の皆さんの仕事に対する価値観が日本人に近く、お互いに共感を持って仕事を進められる」とし、新型コロナ禍の影響があった2020~2022年においても、現地工場の従業員の尽力により、生産能力上限を維持したまま稼働できたとしている。

ニデックのモーション&エナジー事業本部・副最高財務責任者(CFO)部長の藤本尚也氏は「ミズーリ州には大学が非常に多く、インターンシップ含めて、非常に優秀な学生を採用できている」「周辺の大企業が、才能ある人材を引き寄せ、結果として自社での人材獲得、事業の成功につながっている」と語った。

(注1)ミズーリ州は米国中西部ミシシッピ川流域に位置する。州人口は約617万人(2022年7月推計)。州都はジェファーソンシティで、主要都市にセントルイス、カンザスシティの人口200万人以上の都市圏を2つ抱えている。

(注2)米国は各州政府が、独自に外資誘致インセンティブや立地を支援するプログラムを有する。ジェトロは、米国への進出や拠点拡大時、州政府などと連携した工場設立や研究開発拠点の設立の立地選定支援サービスを提供しているほか、ミズーリ州を含む各州政府から日本企業へのブリーフィング動画を公開している

(谷本皓哉)

(米国、日本)

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